リファラル採用とは?メリット・デメリット・事例を解説

リファラル採用とは

リファラル採用とは、条件や社風に合うと思われる人材を、自社で働く社員から紹介・推薦してもらって面談へとつなげる採用手法です。リファラル (referral) は紹介・委託などの意味を持つ英単語であり、リファラル採用は新たな採用手法として近年急激に注目を集めています。

自社のビジネスや社風を十分に理解している既存社員からの紹介は、企業にとっても人材のミスマッチを防ぎやすく、紹介された友人や知人にとっても紹介者が働く企業ということで転職に際して安心感や信頼感を得やすくなります。リファラル採用を通した人材は定着率も高いと言われており、企業と応募者の双方にとってメリットのある採用手法として注目を集めています。

また、リファラル採用を実施している企業の中には、積極的な紹介を促すために、人材を紹介してくれた社員に対して報酬やボーナスなどのインセンティブを与えている企業も多くあります。こうしたインセンティブなどのコストは求人広告媒体などの掲載費と比べると遥かに安いため、採用コストの削減施策としても注目されています。

リファラル採用と縁故採用の違い

社員が友人や知り合いを会社に紹介して採用するというと、ネガティブなイメージのある「コネ入社」や「縁故採用」を連想しがちです。どうしても裏口のような後ろ暗いイメージを伴うこれらの採用方法に対し、リファラル採用は明確な違いがあります。

コネ入社や縁故採用は、血縁関係にある親族や深いつながりのある知人などを能力やスキルに関係なくねじ込むことを暗に含んだ採用方法です。企業が採用に当たり、課している採用基準や採用試験を無視して強引に入社させるため、一般の採用試験を通して雇われた社員は不公平感を抱きがちです。また、能力が伴わない人材であってもコネがあれば昇進できてしまう場合は、企業の競争力低下の原因にもなりかねません。

一方、リファラル採用はあくまでも社員による紹介・推薦に留まるため、採用に当たっては明確な基準や試験・面接があり、紹介を受けた友人や知人であってもこれらを突破できなければ入社はできません。したがって能力不足にも関わらず採用されることや、社員が不公平感を抱く状況も起きにくいと言えます。リファラル採用は紹介された人材側と企業側が本当にマッチした場合のみ採用される点で、縁故採用などとは大きく異なると言えます。

リファラル採用が注目される理由

過熱する人材獲得競争に対応するため

リファラル採用が広がってきた背景には有効求人倍率の高まりがあります。厚生労働省が発表している「一般職業紹介状況(令和3年8月分)」によれば、2021年8月の有効求人倍率は1.14倍と売手市場の傾向です。企業にとって優秀な人材や自社にマッチした人材を獲得しにくい状況だと言えます。

また、経済産業省がまとめた「2050年までの経済社会の構造変化と政策課題について」の試算によれば、日本では少子高齢化社会が進行して2050年に人口が約1億人まで減少し、生産年齢人口も減少するとのことです。労働力を持った現役世代はさらに貴重な人材となっていくことは確実であり、人材の獲得競争はさらに過熱していくことが予想されます。

こうした背景を受け、企業は従来の「待ちの姿勢」を基本とした採用活動だけでなく、能動的に人材確保に動くダイレクトリクルーティングなどの採用方法を活用するようになりました。リファラル採用はダイレクトリクルーティングのひとつの方法として、今注目を集めるようになったと言えます。

多様化に対応するため

社会の変化やIT技術の進化に伴い、人々の働き方や価値観も変化が生じてきました。ビジネスを取り巻く環境も急激に変化してきており、各企業が生き残りを賭けて自社のあり方を模索しています。20年前と比べると、働く側も企業側も、どちらも多様化が進んでおり、従来の定型的な採用活動だけでは高いレベルのマッチングが困難になってきています。

リファラル採用は、自社のビジネスや社内風土を十分に理解した既存社員がリクルーターとなって友人や知人を紹介するため、多様化が進むビジネス環境にあってもミスマッチや早期退職を防ぎやすく、人材の定着率を高めることに貢献するため、改めて注目を集めています。

リファラル採用のメリット

ミスマッチの防止・定着率の向上

離職の大きな理由として挙げられるのが、仕事内容や社風、条件面などの「ミスマッチ」です。エン・ジャパン株式会社の「入社後のギャップと満足度」実態調査2018によれば、転職者の4人に1人は入社後にギャップを感じていると言います。

こうしたミスマッチを減らして定着率を向上させられる点は、リファラル採用の大きなメリットです。紹介される人材側にとっては、知人が現在も務めている企業ということで職場の雰囲気や風土などをざっくばらんに聞きやすく、企業側にとっても、リクルーターとなる紹介者から紹介される人材の能力や性格などの本当のところを予め把握しやすい、という特徴をリファラル採用は持っています。

そのため、リファラル採用で入社した人材のマッチングの精度は通常の採用手法よりも高く、ミスマッチを防止しやすい仕組みだと言えます。

転職市場にいない潜在創との接点創出

積極的に転職活動はしていないものの、良い条件ならば転職したいと考えている転職潜在層は実はかなりの数がいると言われています。一方、待ちの姿勢を基本とした求人広告媒体や転職エージェントを使った採用方法では転職潜在層へのアプローチは困難です。

リファラル採用を含むダイレクトリクルーティングは、こうした転職市場に出回らない層に直接アプローチをかけられるため、優秀な人材の獲得に向けて大きなメリットを持つ採用方法だと言えます。

また、知人の紹介であるリファラル採用は競合企業と比較されないフラットな状態で応募者と出会えるため、必要以上に獲得競争が過熱していない状況で採用活動を進められる点でも強みがあると言えます。

採用コストの削減

求人サイトや転職エージェントの利用には、掲載費用や紹介手数料など大きなコストがかかります。リファラル採用はこうした高額なサービスを利用せずに直接候補者とやり取りした上で採用が行えるため、採用コストの削減の面でもメリットを持ちます。

リファラル採用を実施するに当たり、紹介者となる社員に報酬やボーナスなどのインセンティブを出している企業もありますが、求人広告媒体や転職エージェントに支払う費用と比較するとずっと安いことが多く、コスト面での強みはリファラル採用の大きな魅力と言えるでしょう。

採用プロセスの簡略化

リファラル採用は採用プロセスの一部を簡略化することにもつながります。候補者は予め紹介者から事業内容や企業風土、社内の雰囲気などの説明を受けているため、説明会の開催や一部の面接などをパスした状態でスタートすることが可能です。採用担当の負担軽減はリファラル採用のメリットと言えるでしょう。

社員のエンゲージメントの向上

リファラル採用は社員のエンゲージメント向上にもポジティブな影響を与えます。社員自身がリクルーターとなることは、社員にとっても改めて理念や事業内容、社内制度などを見直すきっかけになりますし、友人や知人が同じ企業で働くことで企業への愛着や帰属意識が高まることにもつながります。

また、リファラル採用で入社した社員も入社後にギャップを感じることは少ないため、企業に対してポジティブな印象を持ってもらえる可能性は高いと言えます。

リファラル採用のデメリットと注意点

社員への認知とリクルーター教育が必要

社員が友人や知人を紹介してくれることは採用プロセスが簡略化される反面、リクルーターとなる社員に対してリファラル採用の意図や目的を共有したり、求めている人材像について周知したり、リクルーター教育を施したりと、今までになかった負担も増えてしまいます。

こうした情報の周知や教育が為されていない場合、求めている人材像とマッチしていない人材を紹介されてしまう恐れもあります。ミスマッチを起こした人材が入社してしまった場合、早期に退職してしまう可能性が高まります。

リファラル採用のスタートに当たり、こうした負担が発生することはリファラル採用のデメリットと言えるでしょう。

不採用時の人間関係に配慮が必要

リファラル採用は縁故採用とは異なり紹介された人材が必ず入社できるとは限りません。面接や試験の結果、残念ながら不採用になってしまった場合、紹介した社員と紹介された友人の関係に影響が出てしまうことも考えられます。同時に紹介した社員の企業に対するエンゲージメントが下がってしまう可能性もあります。

こうしたリスクを抑えるためには、予めリクルーターとなる社員に必ず採用されるものではないことを周知した上で、紹介される人材に対して事前にその旨を共有したり、不採用時の対応を制度に組み込んだりといった工夫が必要でしょう。いずれにせよ、リファラル採用の導入に当たっては人間関係に十分な配慮が求められます。

制度が定着するまで時間が必要

リファラル採用は既存の社員がリクルーターの役割を担うため、紹介者となる社員は通常業務に加えて採用に関する業務が発生してしまい、負担が増大してしまうことが想定されます。こうした負担を軽減する仕組みづくりや制度設計を予め行わなかった場合、負担が増えてしまうくらいならばわざわざ友人や知人を紹介しないと多くの社員は考え、リファラル採用は頓挫しがちです。

社員に負担を強いない仕組みづくりから、インセンティブの設計、社員への制度の周知、リクルーター教育など、リファラル採用は制度が定着して成果をあげるまでに時間がかかる採用方法だと言えるでしょう。

リファラル採用の費用

リラファル採用は社員に人材紹介をしてもらうため、求人広告媒体などの掲載費用は基本的には発生しません。しかし社内の人脈を利用するからと言って、コストがかからないわけではありません。

リラファル採用を導入するにあたりかかる費用としては、「インセンティブ」などの紹介者報酬のほか、リクルーターとなる社員が友人や知人と会って話すための「交際費」などが一般的に発生します。

インセンティブは人材を紹介してくれた社員に対しての成功報酬であり、採用が決まった場合、1人当たり数万円から数十万円を支給することが多いです。インセンティブの設定金額は企業によって大きな幅がありますが、ほとんどのケースでは求人広告媒体や転職エージェントに支払う利用料と比べてずっと低コストです。また、金銭以外を支給するユニークなインセンティブの取り組みとして、有給休暇の追加や人事評価への加点を行なっている企業もあります。

交際費はリクルーターとなる社員と知人が会うための費用です。リラファル採用の第一歩として、リクルーターは飲食しながらリラックスして友人や知人とざっくばらんに話し合うことが多く、それに伴う費用を企業が負担する形です。交際費が自腹では気軽に何度も知人に声をかけにくいと感じる社員も多いはずで、積極的にリクルーターとして活動をしてもらうためにも交際費の支給は不可欠と言えるでしょう。

リファラル採用をサポートするサービス

MyRefer

https://i-myrefer.jp

MyReferは2015年9月からサービスを提供している「国内初のリファラル採用サービス」を謳う老舗リファラル採用サービスです。リクルーターとなる社員がPCやスマホからMyReferを確認することで、求人票を絞り込んだり、必要な情報を半自動で告知したり、活動状況を確認したり、ワンクリックで人材の紹介ができたりと、リクルーターがリファラル採用を実行するための負担を大きく軽減できます。

利用企業は500社を超えており、中途採用や新卒採用はもちろん、退職した社員の再雇用やアルバイト採用まで幅広いリファラル採用をサポートしています。社員協力率が6倍に、採用単価が80%減に、人事の運用工数が1/3になると謳っており、リファラル採用を効率的に進めるためのプラットフォームとして費用対効果が高いとしています。

Refcome

https://jp.refcome.com

REfcomeは「リファラル採用を見える化し、共にカイゼンする伴走型サービス」を謳う、リファラル採用サービスです。部門や社員ごとの活動量などのデータに基づいて、リファラル採用の成功に向けた分析・改善をサポートします。

REfcomeでは、リクルーター社員の紹介手続きの負担を軽減する機能はもちろん、紹介を妨げるボトルネックになっているポイントを分析して改善につなげる機能、アドバイザーによる支援なども行われています。

中長期を見据え、リファラル採用における自社のベストプラクティスを模索したい企業に適したサービスと言えるでしょう。

GLOVER Refer

https://gloverhr.com

GLOVER Referはリクルートが運営するリファラル採用サービスで、事前設計から運用改善までをリクルートがトータルサポートする点が強みです。

テンプレートからメッセージを作成してSNSやメールで簡単に紹介メッセージを知人に拡散できるなどリクルーターの負担を軽減する機能を持つほか、進捗を管理する機能も持っています。

リファラル採用の事例

事例1:株式会社セールスフォース・ドットコム

顧客管理ソリューションの世界的な大手であるセールスフォース・ドットコムは、年間採用人数の約半数をリファラル採用経由で採用しています。同社では元来エージェント採用を行ってきましたが、リファラル採用で入社した社員の勤続年数やKPIのパフォーマンスが高いことがわかり、本格的にリファラル採用に舵を切ったと言います。

社員に募集中のポジションを通達して協力を求めると、「会社の成長には人が一番重要である」という企業文化に共感している社員が熱意を持ってリファラル採用に協力してくれるそうです。

人材を紹介した社員には旅行券をプレゼントするなど、積極的に協力したくなるような仕組みづくりにも力を入れており、今後もリファラル採用を積極的に活用していく予定だと言います。

事例2:株式会社ビズリーチ

ビズリーチは創業当時からリファラル採用を行っている企業です。社員が自主的に採用にコミットするリクルーティングプロジェクトを立ち上げ、社員をチーム分けして各チームで3カ月に1人入社してもらうよう試行錯誤しつつノウハウを共有してきた結果、現在では4割の社員がリクルーターとしてプロジェクトに参加していると言います。

今後は「事業創りは仲間探し」という社内文化の醸成を目指し、リファラル採用の入社比率を5割まで持っていきたいと考えているとのことです。

事例3:富士通株式会社

富士通ではICT領域の即戦力人材を確保するために、リファラル採用を導入しています。専門性の高い人材の確保のためには従来の採用チャネルだけではなく、リファラル採用を含む新たなチャネルが必要だと判断して導入したとしています。

33,000人の社員がそれぞれ社外に人脈を持っており、その人脈にダイレクトにアプローチして人材を発掘しようと試みました。紹介に当たっては不公平感が生まれないよう、選考プロセスに紹介者は関与しない、考え方のガイドラインを設定する、などの細かいルールを定めたとのことです。

4カ月ほどのトライアル期間を経て本格的に導入を行った結果、導入から1年弱で約20名の採用に至ったと言います。今後はより社内への浸透度を深めていき、リファラル採用をキャリア採用の軸にしていきたい考えです。

まとめ

ミスマッチを防ぎ、定着率を高める採用方法として、リファラル採用が注目を集めています。導入に当たってはさまざまな課題があり、制度設計や運用にも試行錯誤が求められますが、企業の風土に合い、高いパフォーマンスを発揮できる人材を発掘するための新たなチャネルとして、リファラル採用は高い可能性を持つと言えます。

会社で働く多くの社員を巻き込み、積極的にリファラル採用に取り組んでいくことで、企業に競争力をもたらす人材の獲得やポジティブな文化の醸成が実現できることでしょう。今後さらに広がりを見せるであろう、リファラル採用に注目していきたいものです。

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