何年でCXO/取締役になる?マザーズ上場300企業を分析【2022】

調査内容

背景

ビジネスパーソンとしてキャリアアップを望む人の多くは、一度は経営陣や役員になることを夢見たことがあるのではないでしょうか。何千人もの従業員を抱える大企業では、20~30年以上の長い年月をかけて評価と実績を積み上げなければ経営陣になれないケースが大半ですが、若く勢いのある企業では若い年齢でも取締役に名を連ねている方や、転職から数年で経営陣に就任する方も珍しくありません。

本稿では、東証マザーズ上場企業の公開情報のリサーチを基に、COOやCFO等のCXOから執行役員、代表取締役まで、役職ごとに就任までにかかっている平均年数を読み解き、キャリアアップを目指す若手ビジネスパーソンの一助となることを目指します。

調査概要

本調査では、以下の方法にて調査を実施しました。

  • 調査内容:CXO・取締役は転職から何年で就任しているか
  • 調査対象:東証マザーズ上場企業の役員
  • 調査役職:CEO (代表取締役) / COO / CFO / CTO / CHRO / 取締役 / 執行役員
  • 調査企業数:300社
  • 有効データ数:462件
  • 調査期間:2022年2月20日~2022年3月10日
  • 調査手法:公式サイトの役員プロフィール等を利用したWeb調査

調査では、各企業の役員略歴に明確な「入社年」や「就任年」が記載されていた役員のみを集計しました。創業者の代表取締役は「設立年」を「入社年」として集計しています。また、入社や就任の月が明記されていない場合、便宜上1月として計算しています。

役員になる平均年数(全体の平均)

役員になる平均年数(全体の平均)

マザーズ上場企業300社462人の取締役の略歴を分析した結果、CXOや執行役員などいずれかの取締役になるためにかかった平均年数は約2年でした。特筆すべきは中央値が0年である点です。半数は入社直後に取締役に就任しており、入社3年以内まで含めると取締役の3/4が短期間で就任していることがわかります。

若い企業が多いマザーズでは、創業者の代表取締役が代替わりせずに上場を果たしているケースが大半を占めており、多くの代表取締役は入社0日で現職に就いています。また、COOをはじめとする幹部クラスも創業時または創業直後に入社している立ち上げメンバーが目立ち、0~2年以内で取締役に就任している方が珍しくありません。

また、上場を目指す過程で既に実績と経験のある専門家をCFO等の役員として迎え入れている企業が目立つことも、もうひとつの特徴と言えます。特に短期間で株式公開を目指すスタートアップの場合、叩き上げの社員をゼロから教育して専門家に育てるよりも、即戦力のプロをチームに迎え入れる方がスピードの面で優れているため、こうした抜擢が行われていると考えられます。このケースでは入社とともに役員に就任する、または1年未満で役員となるケースが目立ちます。

以上の背景を踏まえると、若く勢いのある企業では「実力と実績のあるビジネスパーソンが転職後まもなく取締役に就任し、急成長を支える原動力として活躍している」というモデルが多く見られると言えるでしょう。

CEO(代表取締役)になる平均年数

CEO(代表取締役)になる平均年数

462件の調査データのうち100件がCEO(代表取締役)のデータでした。CEOになるまでにかかった平均年数は約0年であり、96%が会社創業と同時など1年未満でCEOに就任していることがわかります。

今回調査した300社のマザーズ上場企業は創業から平均10年で上場を果たしており、創業者のCEOから代替わりしていないため、このようなデータとなったと思われます。

若く勢いのある企業では、強力なリーダーシップを持った創業者がチームを率いて上場していることがデータから窺えます。なお、このような「平均0年でCEOに就任している」という結果は、東証一部など歴史ある企業が中心となる母集団を対象とした調査では全く異なるデータが得られると予測されます。

[参考データ]
CAREER DATABASEでは、実際のCEOの前職や転職後のキャリアフローデータを閲覧することが可能です。
⇒ CEOのキャリアフローを詳しく見る

COOになる平均年数

COOになる平均年数

462件の調査データのうち21件がCOOのデータでした。COOになるまでにかかった平均年数は約1年半であり、62%のCOOが共同創業者として創業時からCOOに就任するなど1年未満で役職に就任していることがわかります。

一方、入社から1~3年でCOOに昇進している方が28%いることも特徴です。創業時には在籍しておらず後に入社したメンバーがCOOに昇進しているケースもあり、中には20代中盤の若手が1~3年の経験を経てCOOに抜擢されている企業も存在しました。創業メンバーでなくとも、優秀な若手の能力が評価されてCOOという責任ある役職に抜擢されているという点は、キャリアアップを目指す若手ビジネスパーソンにとって夢のある話と言えるでしょう。

また、COOのもうひとつの特徴は、子会社で成果を挙げた役員などを親会社のCOOとして迎えるパターンが散見される点です。こうした人事は取締役全体にも一部見られ、逆に親会社の取締役が子会社設立に合わせてCEOやCOOに就任するケースも見られます。

[参考データ]
CAREER DATABASEでは、実際のCOOの前職や転職後のキャリアフローデータを閲覧することが可能です。
⇒ COOのキャリアフローを詳しく見る

CFOになる平均年数

CFOになる平均年数

462件の調査データのうち24件がCFOのデータでした。CFOになるまでにかかった平均年数は約半年強であり、67%が入社と同時にCFOに就任しています。

CFOの特徴として、CFOの多くが監査法人や証券会社、投資銀行などの勤務経験や公認会計士の資格を持つという点です。財務に関する十分な知識と経験を持ったビジネスパーソンを、上場を目指すスタートアップ企業がCFOとして迎えるという構図が想像されます。

この傾向は入社と同時にCFOに就任した方だけでなく、数年の勤務を経てCFOに昇進した方にも共通しています。専門性が求められる財務のトップであるCFOは、相応の知識や経験を持った専門家を中途採用で迎え入れる企業が多いことがデータからも窺えます。

将来CFOになりたいと考えている若手ビジネスパーソンや学生は、財務や税務に関する資格を取得する、監査法人や証券会社、投資銀行のキャリアを経る、といった計画を早い段階から考えておく必要があると言えます。

[参考データ]
CAREER DATABASEでは、実際のCFOの前職や転職後のキャリアフローデータを閲覧することが可能です。
⇒ CFOのキャリアフローを詳しく見る

CTOになる平均年数

CTOになる平均年数

462件の調査データのうち21件がCTOのデータでした。CTOになるまでにかかった平均年数は約2年であり、中央値は1年でした。

他のCXOが入社と同時に役職に就いている方が多いのに対し、CTOは数年の勤務を経て就任している方の比率が高いことが大きな特徴です。この特徴は中央値にも表れています。過半数のCTOは、エンジニアなどの従業員として入社した後、経験と技術を積み重ねた上でCTOに昇進していることがデータから読み取れます。同じように高い専門性が求められるCFOは社内での育成に時間がかかる、または社内にノウハウがなく育成が困難なため外部から迎え入れる企業が多いのに対し、CTOは自社のビジネスを通して経験や技術を磨くことができるため社内で育ててCTOに昇進させる企業が多いと予想されます。

こうした観点から、将来CTOになりたいと考えている若手ビジネスパーソンや学生は、必ずしも転職によるキャリアアップを必要とせず、場合によっては入社した企業でエンジニアとしての技術と経験を磨くことでCTOに昇進できる道筋がある、と考えられます。

ただし、立ち上げ直後で勢いのあるスタートアップに新卒の就職活動で巡り合って採用される可能性は高くはないため、技術を磨ける企業に就職した上で、勉強会やハッカソンなどに参加して横のつながりを作り、魅力的なビジネスを始めようとしているチームやスタートアップを探していくなどの方法も検討すると良いでしょう。

[参考データ]
CAREER DATABASEでは、実際のCTOの前職や転職後のキャリアフローデータを閲覧することが可能です。
⇒ CTOのキャリアフローを詳しく見る

CHROになる平均年数

CHROになる平均年数

462件の調査データのうち、入社日と就任日が明記されているCHROはわずか4件しか該当しませんでした。データの母数が極端に少ないため、正しく傾向を読み取ることは困難だと言えます。よって、ここでは調査時の情報として数値のみを記載するに留めます。

[参考データ]
CAREER DATABASEでは、実際のCHROの前職や転職後のキャリアフローデータを閲覧することが可能です。
⇒ CHROのキャリアフローを詳しく見る

取締役になる平均年数

取締役になる平均年数

462件の調査データのうち151件が取締役のデータでした。本データは、単に取締役と記載されている方から、常務取締役や専務取締役と記載されている方まで、特定のCXOの記載がないあらゆる取締役を含めています。

取締役に就任するまでにかかった平均年数は約2年半であり、中央値は1年でした。この分布は大まかには本調査全体の平均データに近く、全体平均のデータは調査件数の約1/3を占める取締役の影響が色濃く表れていると言えます。やはり入社1年未満で取締役に就任しているパターンが多いだけでなく、1~3年が28%、4~6年が16%と短期間で取締役に昇格している方が多い点が特徴です。

とは言え、CEOやCOOほど創業と同時に就任した方の割合が多いわけではなく、後に加わったメンバーが短期間で取締役に就任しているケースも少なくはありません。ビジネスが成長する中で、チームに加えたい優秀なビジネスパーソンと出会い、ヘッドハンティングなどの形で迎え入れ、短期間で取締役に抜擢する企業が多いのかもしれません。

[参考データ]
CAREER DATABASEでは、実際の取締役の前職や転職後のキャリアフローデータを閲覧することが可能です。
⇒ 取締役のキャリアフローを詳しく見る

執行役員になる平均年数

執行役員になる平均年数

462件の調査データのうち141件が執行役員のデータでした。本データは、特定のCXOの記載がない執行役員をカウントしています。

執行役員に就任するまでにかかった平均年数は約3年半であり、中央値は2年でした。今回、調査対象の分類の中では就任までの平均年数が突出して長い点が特徴だと言えます。他の多くのCXOや取締役では、0年での就任が突出しており、棒グラフで見たときに他の山が小さく見えます。一方、執行役員の棒グラフは、0年の就任も多くはあるものの比較にならないほど突出はしていません。

執行役員に就任した方の経歴を見ていくと、20代などの若手のうちから社員として入社し、転職せずに数年以上働いて、執行役員に昇進している方が目立ちます。生え抜きや第二新卒などの若手の頃からチームに参画し、長年の働きで信頼を獲得して役員に昇進した、というストーリーが想像されます。こうした傾向はCTOにも見られました。

なお、下記のCAREER DATABASEのデータにも示されていますが、地道に働いて執行役員に昇進したビジネスパーソンは、次のキャリアとして取締役やCEOなどに転職しているケースが多く存在しています。今回の調査でも、役員就任時は執行役員だった方が数年後には取締役になっているなど、さらに昇進している方も珍しくなく、社内で昇進するにせよ転職するにせよ、勢いのあるスタートアップで真面目に働いて執行役員に就任することは、経営者の世界に飛び込むひとつの方法だとかもしれません。

[参考データ]
CAREER DATABASEでは、実際の執行役員の前職や転職後のキャリアフローデータを閲覧することが可能です。
⇒ 執行役員のキャリアフローを詳しく見る

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