キャリアデザインとは?目的・設計方法・読んでおきたい本
目次
キャリアデザインとは
定義
キャリアデザインとは、自分がどんなキャリアを歩みたいのか、どんな働き方を理想とするのかといった将来のビジョンを定め、行動指針を設計して主体的に行動に移すことを指します。
現代は働き方への考え方の変化、社会情勢が急速に変化する世の中だと言えるでしょう。そのため、単純に年収や仕事内容で職業を選択するだけではなく、価値観やライフプランを含めた設計を行うことで、自分のなりたい姿を目指して行動してくことがキャリアデザインの特徴だと言えます。
目的
キャリアデザインを設計する目的は、より具体的に自身の行動を明確化していくことにあります。キャリアデザインを設計することで、将来なりたい自分の姿から現在までを逆算し、現在の自分にどんな行動やアクションが必要になるのかが明確になります。
またキャリアデザインを通じて、自分の強みなどを客観視できるため、自身の市場価値の明確化にもつながります。市場価値がわかることで地に足が付いた行動も取りやすくなるでしょう。
キャリアプラン・キャリアパスとの違い
キャリアデザインと似た言葉として、「キャリアプラン」や「キャリアパス」などが挙げられます。
キャリアプランとは、転職などを含めて自身の将来の仕事に関するプランを決めていくことを指します。キャリアデザインと同じくキャリア設計を行いますが、キャリアデザインが長期的な人生設計に基づくのに対し、キャリアプランはもう少し短いスパンで自身のキャリアを捉える点が異なると言えるでしょう。
キャリアパスとは、主には企業や組織内での昇進や目標に関するステップのことを言い、自身が設定するものではなく、組織側がモデルとして昇進条件やその後のキャリアについて示すことが一般的です。
キャリアデザインが注目される理由
キャリアデザインが注目される理由の背景には、さまざまな「変化」が存在します。働き方の変化や働く人の意識の変化、社会情勢の変化、人事評価の変化などが挙げられるでしょう。
例えば人事評価の変化としては、かつて当たり前だった年功序列や終身雇用などの考え方・制度も鳴りを潜め、近年では新たな評価制度が広がり、人材の流動性も高まっています。2019年には、トヨタ自動車の豊田章男社長も「雇用を続ける企業などへのインセンティブがもう少し出てこないと、なかなか終身雇用を守っていくのは難しい局面に入ってきた」と述べ、雇用体制の変化に言及しています。
また、所属している企業の仕事以外に副業を持って自身のスキルを磨く人や、働き方について見直す人も多く出てきました。副業などの取り組みを後押しする企業も増えています。
こうした考え方の背景には政府が発表している「人生100年時代構想」が挙げられるでしょう。国民の健康寿命が世界でもトップクラスの日本では、定年退職の延長や働き方改革の推進などが行われています。従来の60歳定年退職という考え方から多くの人が長く健康に働くことが目標に変化してきたと言えるでしょう。
これらの変化から従来の働き方に対する考え方ではなく、自身が主体的に考えるキャリアデザインが注目されてきたというわけです。
キャリアデザインのメリット
個人側のメリット
個人側のメリットとしては、自分自身に軸ができるという点です。アデコ株式会社が行なった「人生100年時代のキャリア」に関する意識調査によれば、明確なキャリアビジョンを持っている人は約3割ほどです。また、キャリア構築に不安を感じている人は全体の8割弱にまで上ります。つまり、多くの人が自身のキャリアや将来のビジョンが曖昧・不透明な状態で働いていると言えます。
こうした不安の解消に対し、キャリアデザインは有効です。キャリアデザインによって自身のビジョンとそれを達成するためのルートを明確にすることで、キャリアに対する不安を解消し、仕事に対するモチベーション向上にもつながります。
企業側のメリット
社員がキャリアデザインを描くことは企業側にもメリットがあります。大きくは社員の早期離職を防げることと組織力の強化の面でメリットがあります。
先述したように近年では人材の流動性が増しており、終身雇用を前提として同じ職場にこだわる人は少なくなってきました。社員の転職やフリーランスなどの働き方も多様化してきています。
しかし企業にとって、人材流出や早期退職などは様々な損失につながります。こうした問題を回避するためにも、企業は社員のキャリアに対する意識を把握し、社員のキャリアデザインを実現するための支援を行うことで、社員のワーク・エンゲージメントを高め、離職を防ぐことができます。ワーク・エンゲージメントが高い社員が多くなれば、社員の離職が減り、生産性の向上も見込めるため、企業の組織力は強化されていくでしょう。
キャリアデザイン設計の4ステップ
キャリアデザインの設計は大きくの4つのステップで設計していきます。それぞれのステップについて詳しく見ていきましょう。
①現状と価値観の分析
キャリアデザインを設計する最初のステップとして、まずは自分について見つめ直すことから始めましょう。きちんと現状を把握することで、より具体的なプランを練りやすくなります。現状把握の際は以下の5点を書き出してみると良いでしょう。
- これまでの職歴、経験業務
- 仕事で得た知識、資格、技能、人的ネットワーク
- 仕事を行う上で大切にしていたこと・やりがいを感じたこと
- 仕事を行う上でストレスを感じたこと
- 理想的な働き方、生き方
これらを書き出すことで自身の強みや弱み、何ができて、何が苦手なのかが把握できます。また、現状把握により客観性を持たせるために、同僚や上司からのフィードバックをもらうことや適性検査などを行っても良いでしょう。
②目標の設定
次に行うのは将来の目標設定です。将来的になりたい自分を書き出してみると良いでしょう。その際は3年後、5年後、10年後のように段階的に書き出していくことで、より具体的に設定ができます。どんな企業のどんなポジションで、どんな仕事をしているかを設定していきます。合わせて、そのために必要なスキルも書き出せればより効果的です。
キャリアデザインの目標を考えるとき、なかなか想像しにくければゴールから逆算して考えることも良いでしょう。20年後・30年後にありたい姿を想像し、そこに至るために必要なステップを考えることには意味があります。
また、キャリアデザインは長期的な仕事と人生に関する設計を行うため、必要に応じて重要なライフイベントなども記入しても良いでしょう。働くこととプライベートを切り離して考えても片手落ちであり、どう生きたいかを総合的に考えることはキャリアデザインにおいても役に立つはずです。
表)目標の設定例
時期 | 目標 | 必要なスキル等 |
---|---|---|
3年後 | 最年少でリーダーに昇進する | 昇進試験の合格、高い実績 |
5年後 | 大手人材会社に転職し、マネージャーに昇進する | ヘッドハントされる実績 |
10年後 | 人事コンサルタントとして独立起業する | コンサル経験、経営学 |
15年後 | 年商1億円を達成する | マネジメント力 |
③具体的なアクションの設定
将来の目標設定が完了したら、目標達成のために具体的なアクションを設定していきます。現在の自分の仕事と将来なりたい自分のギャップを埋めていくために何をすればいいかを考えます。資格や技術、能力、実績などを挙げていき、いつまでにどのように達成していくかを細かく決めていきます。
キャリアやビジネスに関する「Will-Can-Must」というフレームワークがあります。「Will-Can-Must」は、Will(実現したいこと)と、Can(自身ができること)、Must(すべきこと)の3つの領域を把握し、これらの円が重なるキャリアがどんなものなのかを理解することに役立ちます。また、Willに対してCanやMustがずれている場合、どのようにすればそれらの差を埋められるのかを把握することにもつながるでしょう。具体的なアクションを考える際には、このフレームワークに頼ってみても良いかもしれません。
アクションの設定に際しては優先順位を決めておくことも重要です。アクションを設定してもどこから手をつければ良いのか分からなければ意味がありません。優先順位をつけることで、やることと順序が明確になり、モチベーションも上がっていくでしょう。
④計画の実行と見直し
最後のステップは当然ですがアクションの実行です。自身が設定したアクションをひとつずつ実行していくことで、なりたい姿に近づくことができます。
アクションを実行していく際に重要なことは、定期的なチェックとプランの見直しです。定期的に設定したプランと現在の自分の進捗を確認していくことで、自分の現在地を見失うことがなくなります。進捗が遅れたまたはずれが発生した場合、計画に無理がなかったか、穴がなかったかなどを見直し、新しいプランを組み直します。トライアンドエラーと軌道修正を繰り返すことで、キャリアデザインで目指した目標に確実に近づいていくことでしょう。
キャリアデザインを設計する上で読んでおきたい本
ビジョナリー・キャリア
「7つの習慣」で有名な経営コンサルタント、スティーブン・R・コヴィー博士の考えに基づき、読者に偉大な人生を歩むことを提案している本書。偉大なキャリアを築き、偉大な人生を送るにはビジョンが必要と言及し、全27セッションからビジョンの設計方法を紹介しています。キャリアデザインを考えるときに必読の一冊と言えるでしょう。
- 書籍名
- ビジョナリー・キャリア
- 筆者
- フランクリン・コヴィー・ジャパン
- 出版社
- キングベアー出版
- 発売日
- 2017/3/17
- URL
- https://amzn.to/3B4lvG2
ストラテジック・キャリア
米国務省・国防総省・マッキンゼー&カンパニーなどで戦略に携わってきたキャリアデザインの第一人者、ビル・バーネット氏によるキャリア戦略論をまとめた本書。ビル・バーネット氏が講師を務めるビジネススクールのキャリア戦略コースを書籍化しており、天職に就くまでのロードマップ作成から実行までの方法が書かれています。
- 書籍名
- ストラテジック・キャリア
- 筆者
- ビル・バーネット
- 出版社
- プレジデント社
- 発売日
- 2016/8/27
- URL
- https://amzn.to/3gjm06P
働くひとのためのキャリア・デザイン
2002年に初版発行の少し古い書籍ですが、今も多くの社会人が参考にしている良著でもあります。キャリア観からキャリアデザインの戦略、課題までをまとめています。著書の中で、筆者は「キャリアの中で節目と感じるときは、キャリアの問題を真剣に考えてデザインしてほしい」と記しており、あなたがキャリアの節目に直面した際、どのように考えれば良いかの思考の手助けをしてくれるでしょう。
- 書籍名
- 働くひとのためのキャリア・デザイン
- 筆者
- 金井 壽宏
- 出版社
- PHP研究所
- 発売日
- 2002/1/15
- URL
- https://amzn.to/3B157FZ
35歳までに読むキャリアの教科書
「就職・転職の絶対減速」を切り口にキャリアを考える一冊。この時代を生き抜くために自分の市場価値を高める方法などを具体例に沿って解説しています。20代〜30代のビジネスパーソンに向けて書かれた指南書のような内容ですので、若手がキャリアデザインを考える際の参考になるでしょう。
- 書籍名
- 35歳までに読むキャリアの教科書
- 筆者
- 渡邉 正裕
- 出版社
- 筑摩書房
- 発売日
- 2010/10/7
- URL
- https://amzn.to/2WcwRZu
まとめ
ビジネスを取り巻く環境は目にも留まらぬ早さで変化・多様化してきています。人事制度や働き方に対する考え方の変化に、企業・個人の双方が対応していかなければ生き抜くことが難しくなってきています。こうした変化に対応するためにも、一人一人がキャリアデザインについて考え、理想とする将来の姿に向かってトライアンドエラーを繰り返していくことが重要です。本記事がキャリアデザインで悩むビジネスパーソンの一助となれば幸いです。
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