エッセンシャルワーカーとは?8つの職種と課題

エッセンシャルワーカーとは

エッセンシャルワーカー(essential worker)とは、私たちが日常生活を送る上で欠かせない仕事に従事する労働者の総称です。新型コロナウイルス感染症の拡大の中、生活基盤を支える重要な職業の従事者「生活必須職従事者」として改めて注目を集め、2020年の流行語大賞にもノミネートされました。
エッセンシャルワーカーの代表的な8つの職種・職業」の章で詳しく解説しますが、「医療」「介護・保育」「公共交通」「物流・郵便」「小売・販売」「公共インフラ」「公務員」「1次産業」などの8つの職業がエッセンシャルワーカーに該当します。
かつてブルーカラーと呼ばれた肉体労働を伴う職業を一部含んだエッセンシャルワーカーですが、どんなときでも社会を支えるために働く姿から、当たり前の日常生活が脅かされてしまった現在、社会から尊敬を集める職業となりました。

エッセンシャルワーカーが注目される理由

エッセンシャルワーカーが注目を集める背景には、先述のように新型コロナウイルス感染症の拡大が挙げられます。
人類が経験したことのない規模での感染症を何とか抑えるため、世界中の国々では人流を抑制しようと外出自粛やテレワークを強く推奨しました。しかし私たちの暮らしをこれまで通りに維持していくために、どうしても現場で働くことが求められる職種も存在します。その代表とも言える職種がエッセンシャルワーカーであり、社会から注目を集めました。コロナ禍において感染リスクに身を晒しながらも現場に立ち続け、社会基盤を支え続けるエッセンシャルワーカーの重要性を誰もが再認識したと言えます。
2020年4月17日の総理大臣記者会見では、安倍晋三首相(当時)が「電力やガス、水道の供給、ごみの収集・焼却、鉄道の運行」など具体的な職種を挙げながら、エッセンシャルワーカーの人々に対して感謝の言葉を述べました。こうした首相自らが発言したことや多くのメディアが取り上げたことで、エッセンシャルワーカーという言葉が広く浸透し、2020年の新語・流行語大賞にもノミネートされました。また、東京オリンピックの開会式で医師と看護師が聖火ランナーを務めたことで、さらに多くの注目を集めることとなりました。
このようにエッセンシャルワーカーは社会基盤を支える人々へ、感謝や敬意を示すものとして多くの人々に注目されています。

エッセンシャルワーカーの代表的な8つの職種・職業

医療

医師、看護師、薬剤師、臨床検査技師など病院や薬局で働く医療従事者は、エッセンシャルワーカーという単語から最もイメージしやすい職種かもしれません。新型コロナウイルス感染症の治療から疑いのある人への検査、ワクチン接種など、感染リスクと常に隣り合わせで業務にあたっています。また通常医療も止めることはできません。まさしく最前線で日々の業務を行っている職種です。コロナ禍において、絶えぬ感謝と尊敬を集める崇高な仕事と言えるでしょう。

介護・保育

高齢者施設で働く介護士や保育園で働く保育士などもエッセンシャルワーカーに該当します。介護士、保育士ともに職員と利用者が密接に関わり合う業務のため、感染防止に最大限の注意を払いながら業務を行っていますが、感染リスクが高い現場で日々利用者をサポートし続けています。核家族化や女性の社会進出が進んだ結果、介護や保育を専門施設に委託することが一般的になった現在、そこで働くエッセンシャルワーカーに日常を支えてもらっている家庭も多いことでしょう。

公共交通

公共交通は私たちにとっての足代わりとなっており、鉄道やバスなどは多くの人が通勤・通学のために利用しています。公共交通を担う運転士や駅の職員なども現場にいなければ成り立ちません。私たちがコロナ禍でも仕事や病院へ移動できるのはこうした人々が現場で奮闘しているからです。

物流・郵便

物流トラックのドライバーや宅急便の配達員、郵便局の配達員など、物流や郵便に携わる人々もエッセンシャルワーカーに該当します。現在の物流網は全国各地に網の目状に広がっており、私たちの生活に必要な食料品や日用品を届けてくれます。コロナ禍においてはインターネット注文のニーズが増え、物流の需要が大きく増加しました。総務省が発表した「新型コロナウイルス感染症で変わるネットショッピング
-家計消費状況調査の結果から-」によれば、ネットショッピング利用世帯の割合は統計開始後、初めて5割を超えたとしています。私たちが日々、利用する荷物を届けてくれる物流や郵便に携わる人々はなくてはならない存在と言えるでしょう。

小売・販売

私たちが毎日消費する生活必需品を買い揃えるスーパーやコンビニエンスストア、ドラッグストアなどで働く人々もエッセンシャルワーカーです。こうした小売店や販売店のおかげで、私たちは食料品や日用品を簡単に手にすることができますが、そこで働くエッセンシャルワーカーは日々不特定多数の顧客と接するため、コロナ禍においては大きな感染リスクを背負っていると言えます。入り口での消毒液の設置やマスクでの入店の徹底、カゴの消毒など、感染拡大防止を徹底した上で私たちに安心・安全な買い物を提供する姿勢に感謝したいものです。

公共インフラ(電気・水道・ガス・通信・ごみ収集)

電気や水道、ガス、通信、ごみ収集などの公共インフラ事業は、普段意識されることが少ない一方、これらの存在なくして私たちの生活は成り立ちませんし、万が一止まってしまったときの影響は想像を絶するほど大きいでしょう。こうした公共インフラの維持のために働いている人々もエッセンシャルワーカーです。中でもコロナ禍において注目されたのが、ごみ収集を行う人々です。緊急事態宣言などによる外出自粛の影響で家庭ごみが増加したことに加え、使用済みのマスクなどを処分するため感染リスクと常に隣り合わせと言えます。電気・水道・ガスなどのインフラに加えて、ごみ収集を行う人々は私たちの公衆衛生を守ってくれているのです。

公務員

県庁や市役所、区役所などの職員に加えて警察官や消防士、保健所の職員など、私たちが安心・安全に暮らすための行政サービスを行っている公務員もエッセンシャルワーカーです。中央省庁の職員は全国の新型コロナウイルス感染症の感染状況の把握から対応の指示など、休みなく働き続けています。また、役所ではコロナ禍における補助金などの行政支援も従来の業務に加えて行われていますし、保健所は極度の人手不足にも関わらず必死に住民への対応を続けています。

1次産業(農業・林業・漁業)

農業・林業・漁業などの1次産業に携わる人々もエッセンシャルワーカーと呼べるでしょう。他のエッセンシャルワーカーのように感染リスクが高まる環境に身を晒して働く職業ではありませんが、私たちの食料を生産してくれている1次産業は、国家の重要な戦略課題である食料自給に関わる重要な仕事です。一方、1次産業は過酷な労働や後継者不足を理由に就労人口が減少し続けており、食糧自給率の減少は、生産額ベースでもカロリーベースでも歯止めがかかりません。近年では、IoTやAIなどの先端技術を駆使した農業に取り組む事業者も増えてきましたが、依然として課題が山積している業種と言えるでしょう。

エッセンシャルワーカーの課題

人手不足

エッセンシャルワーカーの課題として度々挙げられているのが「人手不足」です。昨今、新型コロナウイルス感染症の拡大によって医療現場が逼迫し、人手不足に陥っているニュースを多く耳にするかと思います。人手不足を回避するために、医療従事者は濃厚接触者として判定されたとしても新型コロナウイルス感染症の診療に当たることを認めると厚生労働省は発表しました。医療現場の人手不足はそこまで逼迫しているのです。
また医療現場だけでなく、介護現場や自治体職員などでも慢性的な人手不足が叫ばれています。介護業界はアフターコロナでも人材不足が解消されないと言われています。
こうした人手不足の原因としては専門的な知識を必要とする職種が多く、簡単に人手を増やせないことが挙げられます。そのため現在の職員たちの業務過多に繋がってしまっています。未来を見越した人材育成は容易ではありませんが、国や自治体、企業などの枠を超えて取り組まなければならない課題と言えるでしょう。

低い待遇と賃金

エッセンシャルワーカーの仕事は私たちの生活に必要不可欠にも関わらず、労働の過酷さに対して待遇が悪く、低賃金になりやすいなどの課題が目につきます。また、労働時間が長く、休日日数が少ない、勤務体系が不規則など、エッセンシャルワーカーはワークライフバランスを保ちにくい場合も少なくありません。
医療関係ではコロナ禍において経営状況が悪化している病院が増加していることが、「新型コロナウイルス感染拡大による病院経営状況の調査」から報告されています。そのため最前線で働いている医療従事者への賞与がカットされるなどの問題が出てきているのが現状です。他にも小売業や保育などは非正規雇用が多くを占めているため、賃金が上がりにくい構造になっています。こうした課題を解決しなければ、前述した人手不足を解消することもままなりません。

高いリスク

エッセンシャルワーカーは常に現場に出て働いており、リモートワークを行うわけにはいけません。現場で多くの人と接触するエッセンシャルワーカーは、在宅勤務で行う仕事をしている一般のビジネスパーソンよりも高いリスクに向き合いながら仕事をせざるを得ません。
また理不尽にも、医療従事者などはコロナ禍の最前線で働いていることによって差別的な扱いを受けるリスクも抱えてしまっているという報告もあり、肉体的に厳しい環境にいるだけでなく精神的にも厳しい状況にあるエッセンシャルワーカーも多くいると言われています。
最前線で働くエッセンシャルワーカーに対し、敬意を払うことはあっても差別をすることなどあって良いはずがありません。私たち一人一人が意識を変えていく必要があるでしょう。

エッセンシャルワーカーをサポートするための支援・取り組み

政府による支援

厚生労働省は「新型コロナウイルス感染症対応従事者慰労金交付事業」を行っており、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止に奮闘する医療従事者と医療機関の職員に対して、1人あたり5万円から20万円の慰労金を配布するとしています。
また厚生労働省は、医療人材の確保に向けて、離職防止や潜在有資格者の現場復帰の促進などを具体的に示した「新型コロナウイルス感染の拡大に対応する医療人材の確保の考え方 及び関係する支援メニューについて」も発表しています。今、最も逼迫している医療機関への支援は、今後も手厚く行われていくことと思われます。

企業による支援

企業によるエッセンシャルワーカーへの支援の輪も徐々に広がりを見せています。例えばイオン株式会社では、全国のパート・アルバイト従業員に対して特別手当を2020年・2021年の2年連続で支給しています。同業種のスーパーでは他にも株式会社ライフコーポレーション、株式会社ベルクなどが従業員への特別手当を行い、従業員への感謝の意を示しています。
こうした従業員への支援の動きは小売業だけでなく他業界でも活発化しています。化粧品大手の株式会社ファンケルでは電話窓口の従業員に対して特別慰労手当の支給を決定しました。
エッセンシャルワーカーの課題」の章で説明した待遇や賃金などの課題解決に向けて、企業が積極的な取り組みを見せたことは大きな前進と言えるでしょう。今後もエッセンシャルワーカーに対し、企業がサポートする動きが続くことを期待したいものです。

まとめ

エッセンシャルワーカーの重要性がコロナ禍によって再認識されつつあります。多くのエッセンシャルワーカーが最前線で奮闘してくれているおかげで、私たちの生活は維持されていると言えます。
一方、社会を維持するために欠かせないはずのエッセンシャルワーカーの待遇や賃金、労働環境などは十分なものとは言えないのが現状です。政府や企業がさまざまな支援を継続的に行い、待遇の改善を続けることが、社会基盤を支えるエッセンシャルワーカーの問題解決の糸口となることでしょう。私たちの生活を支えるエッセンシャルワーカーの人々の待遇が少しでも良くなることを願っています。

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