パラレルワークとは?意味・メリット・事例まで解説

パラレルワークとは

パラレルワークとは「複数の本業を同時に行っていく働き方」のことです。複数の本業を行い、自身の活動や仕事などを同時並行で行っていく”複業”で働いていくことを指しています。パラレルワークはひとつの企業や仕事に依存せずに複数の収入とキャリアを得ることで、リスクの分散や収入アップをすることを目的として行われます。

2018年に厚生労働省が発表した「働き方改革実行計画」の「モデル就業規則」において、副業禁止規定を削除したことなどを後押しとして、パラレルワークは広がりを見せています。

インターネット接続サービスのSo-netが行った、全国の20代~50代の2,500名を対象にした調査によると、5人に1人がパラレルワークを実施しているという結果となっています。20代女性の割合が増加傾向にあることに加え、専業ワーカーに対して「今後パラレルワークをしてみたいか」と質問したところ、「行いたい」と回答した人は6割に上ったとのことです。

多様な働き方が求められている現在において、同時並行で複数の本業を持つパラレルワークが注目を集めていることがデータとしても現れていると言えるでしょう。

パラレルワークと副業の違い

副業との違い

同時並行で複数の本業を持つパラレルワークが「複業」と表現されるのに対し、「副業」は本業をしっかり持ちつつ補助的な仕事を別に持って収入を得ることを意味します。パラレルワークと副業は、意味としても字面としても混同されやすい概念ですが、副業は本業と比較して収入や労働時間が少なく、あくまでもメインが本業である点において、パラレルワークとは大きく異なります。

兼業との違い

兼業とは、本業以外に事業を掛け持ちすることを意味します。ひとつの本業に専念する「専業」に対し、複数の事業を兼ねる「兼業」という立ち位置です。副業のようにどちらがメインかを問うことはない点においてパラレルワークと似ていますが、兼業は多くの場合、自営業など自らの事業を掛け持ちするときに使われる言葉です。会社勤めをしつつ家業の農家を継いでいる「兼業農家」などの使われ方がイメージしやすいかもしれません。

パラレルキャリアとの違い

パラレルキャリアとは、「本業と並行して自分自身のスキルアップやキャリアアップ、目標の達成、社会貢献のために行う、第二のキャリア形成を行う活動」のことを指します。パラレルワークが収入源となる複数の本業を持つことを意味するのに対し、パラレルキャリアは収入を伴わない活動も含む点が大きく異なります。会社員をしつつボランティア活動に参加することなどはパラレルキャリアの代表的な例です。

パラレルワークが注目されている理由

終身雇用が前提の時代では、新卒で入社した企業の仕事にのみ注力し、脇目を振らずに働くことで昇進し、いずれは管理職や役員に…、というキャリアのモデルケースが成立していました。しかし、大手企業であっても解雇や倒産などが他人事ではない現代においては、脇目を振らないことは視野狭窄であり、リスクとなる可能性も高まってきています。

こうした背景から、ひとつの企業やキャリアに依存しすぎず、幅広い視野を持つことが重視されてきています。複数の収入源となる本業を持つパラレルワークは、急激に変化してきた現代の労働環境に合った働き方と言えるでしょう。

また、企業側にとってもパラレルワークを認めることで、社員のスキルアップにつながるなどのメリットが見出されてきています。そのため個人と企業のどちらにとっても価値のある働き方として、パラレルワークが注目を集めています。

パラレルワークのメリット

従業員側のメリット

従業員がパラレルワークを行うメリットは主に下記の通りです。

  • 収入源が増える、分散される
  • スキルアップにつながる
  • 人脈が広がる
  • キャリア形成の視野が広がる

パラレルワークの最大のメリットは、当然ですが収入が増えることです。本業を複数持てば、そのぶん収入は増加するでしょう。またひとつの仕事でリストラや倒産などの万が一の事態が起こっても、収入源が分散されているため収入がなくなってしまうリスクを軽減することが可能です。

さらにパラレルワークで複数の本業を並行して行うことで、ひとつの仕事だけでは身に付かなかった多様なスキルや経験も磨かれ、新たな人脈も得られることでしょう。

加えて、複数の仕事に携わり視野が広がれば、さまざまな視点から自身を客観視することにつながり、多角的な視点から自身のキャリアを描くことができるようになるでしょう。

企業側のメリット

企業側が従業員に対してパラレルワークを認めるメリットは主に下記の通りです。

  • 従業員のスキルアップにつながる
  • 優秀な人材の採用につながる
  • 優秀な人材の転職を防げる

企業側はパラレルワークを認めることで、社員が新たな知見や経験を積むことを促せます。加えてパラレルワークに積極的な社員はモチベーションも高く、前向きに業務に取り組む傾向にあるため、自発的なスキルアップが期待できます。スキルアップした社員はさらに活躍が期待できる人材へと成長するため、企業にとってもメリットとなります。

また、採用活動においても企業がパラレルワークを認めていることを示すことで、高い意欲を持った人材の目に留まりやすくなるため、優秀な人材の確保という面でもメリットがあります。
高い意欲と能力を持った従業員は、業務内容や収入に対して不満があれば離職してしまいますが、パラレルワークを許可すれば、従業員は自ら望んだ複数の業務で能力を発揮する機会と収入を得ることができ、転職を防ぐことにもつながります。

パラレルワークのデメリット

従業員側のデメリット

メリットの多いパラレルワークですが、デメリットも正しく理解する必要があります。従業員がパラレルワークを行うデメリットは主に下記の通りです。

  • 労働時間の増加
  • 自己管理を十分に行う必要がある

パラレルワークではどうしても労働時間は増加します。場合によっては、どちらか片方あるいは両方の仕事のクオリティが低下してしまうこともあり得ますし、行き過ぎた場合は健康を害してしまうことも懸念されます。

こうしたデメリットを払拭するためには、自己管理やスケジュール管理などのマネジメントをしっかり行う必要があります。仕事が遅れないように割り振りを行う、健康を保つために睡眠時間を確保するなど、自己管理の徹底を心がけましょう。

また当然ですが、就業規定への違反にも注意が必要です。そもそもパラレルワークや副業を許可していない企業に勤めている場合はパラレルワークを行うべきではありませんし、パラレルワークを許可している企業に勤めている場合でも、情報の取り扱いなどには細心の注意を払う必要があります。

複数社でパラレルワークを行う場合、どちらかの業務で知り得た技術上・営業上などの秘密情報を、もう片方の企業で利用することなどは厳禁です。こうした規則違反やコンプライアンス違反は、信用問題になるだけでなく、解雇や訴訟にもつながってしまう可能性があるため注意が必要です。

企業側のデメリット

企業側が従業員に対してパラレルワークを認めるデメリットは主に下記の通りです。

  • 他社へのノウハウ流出
  • 情報漏えいのリスク増大
  • 従業員のパフォーマンス低下
  • 各種保険料などの調整

パラレルワークを認めることで、自社のノウハウが他社へと流出してしまう恐れがあります。同様に、自社の機密や顧客情報などの秘密情報の漏えいのリスクを伴います。そのため自社と競合している企業ではパラレルワークを行わない規定や秘密保持契約を作るなどして、対策を取ることが必要です。

また、パラレルワークによって従業員のパフォーマンスが低下する恐れもあります。他社の仕事も並行して行っているため、タイムマネジメントが上手くいかない場合は納期が遅れてしまうなど支障が出てきてしまいます。そのためパラレルワークを行っている従業員に対しては、業務量を調整するなどの工夫が必要です。

最後に保険料などの賃金調整です。パラレルワークによって他社で仕事を行っている場合は、社会保険料などの調整が発生します。そのため経理や総務などの担当部署は負担が増えてしまうことが想定されます。

パラレルワークに向いている人

行動力の高い人

パラレルワークは自発的に複数の業務を並行して進めていきます。そのためには高いモチベーションとチャレンジング精神、そして何よりも行動力が不可欠です。まだまだ多くの方がひとつの企業で勤めている中で、複数の企業で働いたり、複数の業務に携わったりすることを決断するのは容易ではなく、一歩踏み出せる行動力はパラレルワークに何よりも必要な資質だと言えるでしょう。

ITスキルの高い人

現状日本では、複数社の企業に正社員として勤めることは就業規則などの面でも許可されにくいため、正社員としてひとつの企業で働きつつ、ITツールを活用してパラレルワークを行うケースがパラレルワークの入口として一般的です。

本業は9時5時勤務の正社員として働き、退社後に自宅で自ら起業したビジネスを行う、といったケースも珍しくありません。また、ネットを活用してフリーランスとして活動を行う方も多くいます。先述したSo-netの調査によれば、パラレルワークで行っている仕事として「ライター・作家」「Web制作」などが上位に来ています。

こうしたビジネスや業務にはITツールの活用が必要不可欠です。成果物の作成から納品まですべてをオンラインで行い、データ管理や取引先との共同ファイル編集などもクラウドで行います。チャットツールやオンライン会議の活用も一般的です。

こうしたITツールを使いこなせる方はパラレルワークを開始するためのハードルが低く、向いていると言えるでしょう。

マルチタスクが負担にならない人

パラレルワークは複数の本業を並行して行うため、マルチタスクが負担にならないことも適性のひとつと言えます。複数の仕事の内容を深く理解し、成果を上げるために頭を使い、スケジュールや進捗を管理し、上司や取引先と円滑なコミュニケーションを行うなど、パラレルワークを継続するためには高いマネジメント能力とマルチタスクスキルが要求されます。

専門的なスキルや知識を持っている人

専門的なスキルや知識を持っている人もパラレルワークに向いています。多くの場合、パラレルワークを行う人材に求められるのは、スペシャリストとしての能力や技術だからです。高い専門性を持っていれば、短時間でも成果や価値を生み出しやすく、スキルや技術を商品として提供することが可能です。

極めて高い専門性や能力、技術などを有している個人は、企業にとって得がたく手放しがたい人材です。こうした人材が離職してしまうくらいならば、別の企業との兼業でも良いから抱えておきたいと企業は判断します。これを突き詰めた例として、実績ある経営者が複数企業の社外取締役として関わっていたり、研究者が複数の大学で教授や特任教授として教鞭を執ったりするケースなどが挙げられます。

いずれにせよ、ジェネラリストよりもスペシャリストはパラレルワークに向いていると言えるでしょう。

パラレルワークの事例 7選

事例① 正社員+起業

転職でも起業でも、現職を退職してから次の行動を起こすことはリスクと隣り合わせです。とりわけ起業はいつ成果が出るとも保障されていないため、現職を退職後に独立をすると路頭に迷う可能性もあり得ます。

こうしたリスクを避けるために有効なのは、正社員として働きながらの起業です。正社員として9時5時勤務で働きつつ、退社後や週末のみ稼働する店舗や事業を立ち上げる形での起業は、リスクを抑えたスモールスタートでの起業に最適です。起業したビジネスがある程度軌道に乗った段階で、本業との時間配分などの割り振りを考えていくと良いでしょう。

事例② 正社員+個人投資家

個人投資家はパラレルワークで非常に人気の高い職業です。先述したSo-netの調査では、「現在行っている仕事」として18.2%の人が個人投資家として活動しています。

株や債券などの投資から、FX、仮想通貨の取引まで、近年さまざまな投資・投機が個人間にも浸透してきました。スマホのアプリが普及していつでもどこでも取引ができるようになったことで、通勤時間や昼休み、退社後などのスキマ時間に取引を行う個人投資家は急激に増えました。株価や為替の動向を知るための学習や調査は、企業動向や海外情勢の理解につながるため、会社での仕事にもプラスになるでしょう。

ただし、投資は必ずしも収入が増えるとは限らず、投機ともなればそれを本業としているプロの投資家に勝って長期的に利益を出し続けることは困難を極めます。レバレッジを利かせた無理な投機などは財産のすべてを失うリスクも伴うため、自己責任のうえ十分に注意した上で取り組んでください。

収入源やリスクの分散を目的としたパラレルワークで個人投資に取り組む場合、NISAやiDeCoなどの積立投資で分散しつつ長期運用を行うなど、比較的リスクの低い方法も選択肢として検討すると良いでしょう。

事例③ 正社員+ITスキルを活かしたビジネス

ITスキルを活かした仕事は、ホームページ制作からプログラミング、デザイナー、Webライター、Web広告運用、動画制作など多くあります。最近ではクラウドソーシングサービスも充実しており、企業がスキルの高い個人に依頼することも少なくありません。

パソコン1台で行える仕事がほとんどで、初期投資がほとんどいらず、スキルそのものを売ることができ、クラウドソーシングにも多くの案件が溢れているため、正社員として働く仕事から退社した後の時間や週末の時間などに自宅で行えるため、スモールスタートのパラレルワークに最適です。

事例④ 正社員+ネットショップ運営

ネットショップを運営している人もパラレルワークには多くいます。近年ではネットショップを無料で簡単に作れるプラットフォームやサービスも充実しており、最大手クラスのプラットフォームともなると100万件以上のネットショップが開設されています。

ハンドメイドの商品や個人輸入した商品、自分で育てた野菜や果物、自家焙煎したコーヒー豆、自作のアート作品など、多種多様な商品が売られており、盛況を博しています。近年では、個人のお店であってもSNSを活用して新規顧客やファンを獲得しているケースも多く見られるため、ネットを戦場としたショップ運営はまさに最盛期と言えるでしょう。

事例⑤ 正社員+YouTuber

近年注目されている職業であるYouTuberもパラレルワークのひとつの選択肢となり得ます。本業で働きつつ、帰宅後や週末に撮影と編集を行うことで、徐々にファンを獲得できれば、いずれは収益化できるかもしれません。現在ではスマートフォンで撮影から編集まで行えるアプリもあり、顔出しにためらいのない若い世代を中心に気軽に始める参入者が増え続けています。

この数年で競合が続々と参入した加熱した市場で収益化は容易ではないものの、夢と実益を兼ねたパラレルワークとして取り組むのも悪くはないでしょう。

事例⑤ 正社員+SNSインフルエンサー

SNSの利用者はとても多く、Twitterは4,500万人、Instagramは3,300万人の利用者が日本国内だけでも存在しています(2021年現在)。そこには広告価値が生まれ、多くの企業が熱い視線を向けており、多くのフォロワーを抱えるインフルエンサーの投稿には高い価値が生まれています。

自身のSNSを育て、多くのフォロワーを抱えることに成功すれば、企業から商品告知やコラボなどの依頼を受けてひとつのツイートや投稿で多くの金額を稼ぐインフルエンサーになれるかもしれません。SNSを趣味とする若者も多く、楽しみながら長期的な目線でアカウントを育て、将来大きく収穫することを夢見るのも、パラレルワークとして良いでしょう。

ただし、各SNSの利用規約に違反した場合、育てたアカウントが凍結されてしまうケースも散見されますし、投稿内容によっては実名で炎上するリスクを抱えることもあるため、運用に当たっては十分な注意を払うと良いでしょう。

事例⑥ 正社員+コンサルタント

コンサルタントはクライアントのビジネス上の課題を分析し、解決へと促して行く頭脳労働であり、専門性の高い仕事であるため、短時間で高い報酬を得やすい特徴があります。

ITや経営、人事などコンサルタントの仕事はそれぞれの分野において、専門的な知識が求められるため、未経験での参入は困難ですが、正社員として働く仕事によって学んだ業界知識や専門知識などを活かして関連案件のコンサルティングを行うことは不可能ではありません。

コンサルタントは必ずしもクライアント企業に常駐しなければならないわけではなく、有している専門知識が有用ならば、退社後の遅い時間や週末などのパラレルワークでも十分な付加価値があるとしてクライアントから重用されることもあるでしょう。

事例⑦ 会社経営者+社外取締役

自身で会社経営を行いながら、他社の社外取締役としてアドバイスや監督を行う人もいます。社外取締役の役割は経営状況をチェックして、客観的な視点から監督し、意見を行うことです。本業の会社での実績や、海外の有名大学のMBAなどを持っていれば、社外取締役として声がかかることがあるかもしれません。

社外取締役は多くの場合社内には常駐せず、取締役会など必要に応じて出勤することになります。そのため数社の社外取締役を掛け持ちしている人もおり、時間の都合は付きやすい仕事と言えるでしょう。また他社の経営状況を客観的に見られるため、自身の会社状況を改めて見直すきっかけになるかもしれません。

まとめ

多様な働き方やキャリアが受け入れられる社会になってきました。副業から一歩進んだパラレルワークという働き方も、今後より浸透していくことでしょう。

終身雇用が崩壊するなど、変化はますます激しくなってきており、勤めている会社が傾かない保証はなくなってきました。パラレルワークを通して、複数の収入源を確保し、経済的な安定性を高めておくことは自身や家族を守ることにもつながります。自身の将来をより豊かにしていくためにも、パラレルワークの活用を前向きに検討してみてはいかがでしょうか。

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