ワークライフバランスとは?利用できる制度と企業の取組事例 5選

ワークライフバランスとは

定義

ワークライフバランスとは、仕事 (Work) と生活 (Life) の調和が取れている働き方のことを言います。日本語では「仕事と生活の調和」と訳され、仕事と生活がバランス良く両立している状態を指して「ワークライフバランスが取れている」などと表現します。

仕事に追われて家庭を顧みない、子育てや介護などの家庭での役割に追われて仕事が十分にできないなど、ワークライフバランスが取れない働き方は長い目で見ると持続可能ではありません。家庭や生活を犠牲にした働き方を誰もがすれば、出生率は下がり、社会を維持できなくなります。誰もが生活に注力して仕事を疎かにすれば、労働生産性は悪化し、経済は落ち込み、貧しい社会になります。ワークライフバランスは、サステナブルな社会を築くために避けて通れない道です。

仕事と生活は相反するものではありません。仕事の充実は必ずしも生活を犠牲にしませんし、家庭での役割を全うすることは仕事を妨げることに直結しません。仕事と生活はあくまでも地続きであり、ワークライフバランスが取れている状態こそが仕事の生産性を高め、暮らしを支え、相乗効果を生み出します。

時代が代わり働き方が多様化する中、ワークライフバランスを取ることはサステナブルな社会を作る上で重要な意味を持ってきていると言えるでしょう。

ワークライフバランスの誤解

ワークライフバランスはしばしば誤解されがちな概念で、プライベートを優先したいがために仕事を減らすといった文脈で使用されることがありますが、これは元来の意味からは外れていると言えます。ワークライフバランスが目指すのはあくまでも調和による相乗効果であり、仕事の手を抜くことではありません。

ワークライフインテグレーションとの違い

ワークライフバランスと似た言葉としてワークライフインテグレーションがあります。ワークライフインテグレーションとは、仕事と生活の線引きをせずにインテグレーション(統合)させることで、人生を充実させようという考え方です。

ワークライフインテグレーションでは、あえて仕事と生活の線引きをなくすことで、仕事と生活が互いに相乗効果を発揮し、仕事の充実が生活を、生活の充実が仕事を、それぞれ豊かにすることにつながる状態を作り出すことを目指します。

ワークライフバランスとの違いは仕事と生活の考え方です。ワークライフバランスでは仕事と生活は天秤に乗せてバランスを取りながら進めることを目指す一方、ワークライフインテグレーションはそもそも仕事と生活の線引きをせず、一つのものとして捉えます。

ワークライフマネジメントとの違い

ワークライフマネジメントもワークライフバランスと似た言葉です。ワークライフマネジメントとは、仕事と生活の両方を積極的にマネジメントして、どちらも充実させて相乗効果を生み出そうという考え方です。

ワークライフマネジメントの考え方はワークライフバランスと非常によく似ています。どちらも仕事と生活の相乗効果を生み出そうとする考え方が共通していますが、その違いはワークライフマネジメントの方がより積極的な意図を持って使われるという点です。

ワークライフバランスという言葉が広がる過程で、「仕事も生活もほどほどに」という間違った意味で使用されることが増えてきたことを受け、より積極的に相乗効果を生み出す姿勢が見える「マネジメント」という単語を含んだワークライフマネジメントという新しい言葉が作られたとされています。現在では、こうした積極的な取り組み姿勢を表現するために、企業などもワークライフマネジメントという言葉を使用するケースが増えてきた印象です。

ワークライフバランスが注目される背景

ワークライフバランスが注目される背景には2つの理由があります。ひとつは「少子化対策」、もうひとつは「働き方に対する考え方の変化」です。

少子化は国家の将来を揺るがす重大な社会問題です。かつてのように長時間労働や激務を前提とした働き方を求められる社会では、男女ともに家庭を顧みる余裕がなく、晩婚化や少子化が加速してしまいます。こうした社会問題を働き方の面から解決するために、政府はワークライフバランスを推進する施策を打ち出しています。

政府は「仕事と家庭の両立支援と働き方の見直し」を課題とし、子育てや親の介護が必要になっても安心して会社を休職できるように「改正育児介護休業法」を整備したり、「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」を掲げたりしています。この憲章では、ワークライフバランスが実現した社会を目指すために、「就労による経済的自立が可能な社会」「健康で豊かな生活のための時間が確保できる社会」「多様な働き方・生き方が選択できる社会」の3点を重視するとしています。

注目される2つ目の理由は、1つ目の社会問題と比べてシンプルです。右肩上がりの経済成長が続いていたかつての時代と異なり、現代では「企業戦士」や「モーレツ社員」などの言葉に代表されるような長時間労働は美徳ではなくなりました。長時間労働は生産性の低さの証とも捉えられ、むしろネガティブな印象さえあります。株式会社アスマークが行なったワークライフバランスの意識調査によれば、仕事重視で生活していきたいと回答した人は1割であるのに対し、私生活を重視したいと回答した人は5割以上に上りました。

現代のビジネス環境においては、効率良く働き、高い労働生産性を示して成果を上げることが重視されており、生活を犠牲にしてでも仕事に邁進するようなワークライフバランスを欠いた働き方は「古い」と言うことでしょう。

ワークライフバランスのメリット (従業員側)

多様な働き方が可能

ワークライフバランスを取り入れることで、時短勤務やテレワークの推進など多様な働き方が進むことは、従業員にとって大きなメリットです。ワークライフバランスが目指すのは仕事と生活の調和です。どのような状態を調和が取れているとするかは、それぞれの状況や事情によって異なります。

キャリアアップを目指してフルタイムで働くことを調和が取れているとする人もいれば、子育てや介護をしつつテレワークで働くことを調和が取れているとする人もいます。フレックスタイムや時短勤務などを必要とする人もいるでしょう。こうした人たち全てが多様な働き方を受け入れられ、ワークとライフのバランスが取れる社会になっていくことは、働く者にとって大きなメリットです。

仕事へのモチベーション向上

仕事と生活の両方がバランス良く調和していれば、心身ともに健康な状態で前向きに仕事に取り組むことが可能です。仕事のモチベーションが向上する点も、ワークライフバランスが取れることのメリットです。

さらに、仕事に対して前向きに取り組んで生産性が上がれば短時間で高い成果を上げることにもつながり、好循環が生まれ、生活も充実します。結果、豊かな人生にもつながっていくことでしょう。

プライベートの充実

前述のように、心身ともに健康な状態で高いモチベーションのもと仕事に取り組めば、短時間で高い成果を上げ、仕事でのキャリアアップと生活の充実を両立することができるようになります。

夫婦で向き合う時間や子供と過ごす時間が増えたり、歳を取った両親に恩返しする時間ができたり、趣味を充実させたり、今までやったことがないことにチャレンジしてみたり、新たな勉強を始めたりと、QOL (Quality of Life) を高めることができるしょう。そして、こうしたプライベートの充実が仕事にも良い影響を与え好循環が生まれるのが、ワークライフバランスが目指す相乗効果とも言えます。

過労等の病気の防止

長時間労働と高いストレスに耐え続けて身体を酷使するかつての働き方を続けていては、40代や50代で心身に異常を来たしがちです。過労で倒れる、ストレスで内臓に異常が出る、うつ病になって心を病むなど、病気はいつやってくるかわかりません。身体を壊すような働き方は個人にとってもメリットがなく、社会全体にとっても喫緊の課題である社会保障費用を圧迫するため褒められた行為ではありません。

ワークライフバランスを取り、心身ともに健康な状態でい続けることは、豊かな人生を送る上で欠かせない要素と言えるでしょう。

ワークライフバランスのメリット (企業側)

優秀な人材の獲得

採用活動において、優秀な人材を集める鍵のひとつが「優れた労働環境」です。優秀な人材は引く手あまた。数ある企業の中から、高い待遇と優れた労働環境が約束された企業を選ぶことが可能です。ワークライフバランスを重視して多様な働き方を受け入れている企業は、これを無視した企業と比べてポジティブな印象を与えます。

また、リモートで働きたい人や時短勤務を希望する人の中にも高い能力を持った優秀な人材がいるものです。こうした層にリーチするためには、前提として働き方に対する多様な価値観を受け入れる土壌が必要であり、ワークライフバランスを重視していることがプラスの影響を与えます。

企業の競争力強化には優秀な人材の発掘が欠かせません。人材の確保につながることは、企業がワークライフバランスの向上に取り組む大きなメリットと言えるでしょう。

従業員の定着率の向上

ワークライフバランスを重視した経営を行うことは、現在所属している従業員の離職率を抑え、定着率を向上させることにもつながります。入社した優秀な人材を定着させることは企業の継続的な成長にとって必要なことです。従業員の企業に対するエンゲージメントが向上して多くの人材が定着すれば、従業員が積み上げた能力やスキルなどが長年活かされ続けて競争力の強化につながりますし、欠員を補うような採用活動を繰り返して疲弊することも避けられます。

また、出産や育児、介護などのために休職することや、リカレント教育などの学び直しのために休職することを制度として認めていれば、これらを必要とする従業員が退職してしまうことも防げます。

人材の流動性が増し、雇用に際して転職含みで採用計画を立てる現代の企業にとって、人材の流出や離職率の抑制は関心の高いテーマです。こうした課題に対するひとつの解決策となることも、ワークライフバランスを重視するメリットと言えるでしょう。

労働生産性の向上

従業員が心身ともに健康で、高いモチベーションのもと働き続けてくれれば、企業の労働生産性は高まります。現代のビジネス環境では長時間労働は美徳ではありません。成長している企業ほど、短時間で集中して仕事を終わらせるための効率化を重視し、時間内に成果を上げることが評価されます。

こうした労働生産性の高い働き方を実現するために、ワークライフバランスの見直しは有効です。毎日高いモチベーションで働くためには、心身ともに健康である必要があります。生活や家庭が充実させて仕事にも好循環を生むワークライフバランスの考え方は、短時間集中型で労働生産性を高めることに直結していると言えます。

企業イメージの向上

現代において企業イメージは大きな武器にも、諸刃の刃にもなり得ます。企業イメージを重視して製品を選ぶユーザーも多く、イメージの良い企業への就職や転職を望む人材も多くいます。ブランディングに成功していれば、ユーザー自身がSNSなどを通して企業のマーケティング活動を強化してくれることもあるでしょう。

一方で、一度でもブラック企業だと認定されてしまうと、その評判は未来永劫インターネット上に残り、企業活動の障害となり続けてしまいます。こうした評判はユーザー側から発信されることもありますが、元従業員などが匿名で内情を暴露して炎上するケースも散見されるため、従業員のエンゲージメントを高め、仮に退職するとしてもネガティブな印象を持たせないように配慮することは、現代のビジネス環境において重要な意味を持ちます。

多様な働き方を認めている、従業員がいきいきと働いている、など組織としてポジティブな印象を与えるためにも、ワークライフバランスは企業のイメージ戦略を考える上で欠かせないものだと言えるでしょう。

ワークライフバランスを向上させるために役立つ制度

ワークライフバランスを浸透させるには、企業としてさまざまな制度を整備する必要があります。先進的な取り組みをしている企業では多くのオリジナリティ溢れる制度が作られていますが、まずは以下の代表的な制度から整備すると良いでしょう。

  • 育児休暇(男性を含む)
  • 産休(産前・産後)
  • フレックスタイム制度
  • 時短勤務制度
  • テレワーク・リモートワーク・在宅勤務

さらに長時間労働を防ぐための業務効率化を行う施策や、有給が取得しやすい風土作りも重要です。制度を作っても浸透しなければ意味がないため、従業員の理解の促進や風土作りは十分に配慮したいところです。

また、残業や休日出勤を禁止することはワークライフバランスを推進する上で意味がありますが、業務量が多すぎるまま禁止しても家に持ち帰って隠れて仕事をするなど、逆効果になってしまうケースも珍しくありません。今まで長時間労働で何とか消化していた仕事をそのまま短時間で終わらせろと言われても無理があります。定型作業を自動化したり、業務フローを見直したり、それでも解決しないようならばそもそもの業務量を見直すなり、短時間で終わらせるための多方面の支援を行う必要があります。

ワークライフバランスへの企業の取組事例5選

事例① サイボウズ株式会社

クラウドサービスの販売などを行うサイボウズでは「100人いたら100通りの働き方」という考えのもと、ワークライフバランスの取れた働き方を実施しています。2005年に離職率が28%と過去最高を記録したことから組織や評価制度を見直した結果、離職率は3~5%程度にまで減少しました。

サイボウズでは「制度」「ツール」「風土」の3つの観点から改革を進め、ワークライフバランスを重視した多様な働き方を可能にしたと言います。とりわけ制度の面では以下のような数々のユニークな制度を打ち立てています。

  • 育児・介護休暇制度
  • 働き方宣言制度
  • ウルトラワーク(在宅勤務制度)
  • 育自分休暇制度
  • 副(複)業許可
  • 大人の体験入部
  • 子連れ出勤制度

例えば「働き方宣言制度」は、育児や介護、通学、副業、複業(パラレルワーク)など、個人の事情に合わせ、勤務時間や働く場所を決められる制度です。また、「育自分休暇制度」では、会社を退職しても最長6年間、いつでもサイボウズに復帰できる育自分パスポートが与えられ、この制度を利用してアフリカでボランティアを経験して戻ってきた社員もいるとのことです。多様な働き方を許容するワークライフバランスの取れた企業として、サイボウズは注目を集めています。

事例② 株式会社資生堂

化粧品の販売などを行なっている資生堂では、社員の健康と自己成長を両立する “Work as a part of fulfilling life” を掲げ、多様な働き方の実現に向けて動いています。

フレックスタイム制度や在宅勤務(テレワーク)制度、サテライトオフィスの活用などさまざまな場所で同じように業務が行える体制を整えています。自社オフィスでは、集中するための個室や、ソファエリアなど、仕事に応じて主体的に業務スペースを選べる環境を整備しています。

また社員のライフスタイルを尊重するという考えから、育児や介護などのライフイベントに影響を受けずキャリアアップできる制度を整備したり、同性パートナーを異性の配偶者と同様に処遇したりと、先進的な取り組みにも挑戦しています。

その他、子育ての支援として「チャイルドケアプラン」というコミュニケーション体制を整備したり、家族を介護する社員へのサポートとして介護休業制度を設けたり、配偶者の海外転勤に伴う休業制度を認めたりと、社員が定着するためのさまざまな制度を打ち立てています。

事例③ 株式会社レオパレス21

アパート・マンション等の賃貸事業を行うレオパレスでは、社員が働きやすい環境を整備するため、2014年にダイバーシティ推進室を設置しました。ダイバーシティ推進室を設置した背景には時間外労働の過多、有給取得率の低下などがあったと言います。

レオパレスは、働き方改革や育児・介護の両立支援、ダイバーシティ推進など、多方面の制度を打ち立てています。以下がその一例です。

  • 時差出勤
  • ワークライフバランスポリシーの策定
  • ワークライフバランス意識調査
  • テレワークの対象範囲拡大
  • 看護・介護休暇
  • 介護コンシェルジュサービスの導入
  • 育児休業期間の延長
  • ワーキングマザー座談会
  • 男性社員の育児休業取得促進
  • カムバック制度
  • 女性活躍に関する座談会

こうした施策を実施した結果、2014年から2020年の間に、一人当たりの時間外労働は27.8時間から11.4時間まで減少し、有給取得率も33%から90.5%まで向上するなど成果が見えてきたと言います。

事例④ 株式会社お佛壇のやまき

仏壇の販売などを行なっているお佛壇のやまきは、従業員が仕事と家庭を両立できるワークライフバランスを整えているとして2018年に厚生労働大臣賞を受賞しています。お佛壇のやまきでは、従業員自身も家族を大切にすることを大切にしており、以下のような取り組みを進めてきました。

  • 時間外労働を月間10時間に制限
  • 有給休暇の年間消化率90%以上の義務化
  • ファミリー休暇制度
  • 短時間勤務制度

時間外労働の抑制に向けては、ITシステムの改善や社員同士が声を掛け合うことで個人の業務負荷を軽減させていると言います。ファミリー休暇制度は家族行事の利用に限定したユニークな休暇制度であり、利用時は会社から3万円の手当が支給されます。このファミリー休暇制度と有給休暇は取得率100%を達成しているとして注目を集めています。

事例⑤ 茅沼建設工業株式会社

茅沼建設工業は北海道泊村で建設業を営む従業員31名(2021年12月時点)の中小企業です。建設業は慣習的に残業が多く、上下関係が強く、男性社会であり、ワークライフバランスとは遠い業界。こうした環境下では、労働時間の削減や有休休暇の取得促進もなかなか受け入れられなかったと言います。

そんな中、茅沼建設工業はワークライフバランスの定着に向けて取り組みを開始し、担当部長の根気強い説得により社長を巻き込んで改善に乗り出したとのことです。具体的な取り組みとしては、以下のような取り組みを行いました。

  • 育児看護特別休暇
  • 家庭教育サポート特別休暇(子供の学校行事のための特別休暇)
  • 育児短時間勤務制度
  • 労働時間管理・業務平準化

こうした取り組みがあまり進んでいない建設業でワークライフバランスの実現に向けて動き出した企業があるとして、企業表彰を受賞したり、メディア掲載されたりと、茅沼建設工業は地元を中心に大きく評価されました。今では北海道教育委員会と協定を締結し、地域の学校の体験学習に協力したり、地域イベントに参加したりといった社会貢献を果たしたことで、入札の際に加点を受けるなど、企業評価が高まめることにつながっているとのことです。

まとめ

家庭や生活を犠牲にした長時間労働が美徳の時代は終わりを迎えました。仕事だけをしていれば企業や社会が成長し続けられる時代でもなくなっています。これからの時代はワークライフバランスを取ることにより、サステナブルな社会を目指すことが求められています。近年では
「健康経営」など従業員の体調や健康を管理することが企業イメージの改善につながることも注目されつつあります。

個人にとっても企業にとっても、ワークライフバランスを実践することはより重要になってきました。より良い社会の実現に向けて、誰もが仕事も生活も充実した日々を送れるようになれば、これ以上のことはありません。本記事がこれからの働き方について考える一助となれば幸いです。

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