パラレルキャリアとは?意味・事例・おすすめの本まで解説

パラレルキャリアとは

定義

パラリアキャリアとは、「本業と並行して自分自身のスキルアップやキャリアアップ、目標の達成、社会貢献のために行う、第二のキャリア形成を行う活動」です。

パラレルキャリアを定義したのは著名な経営学者であるピーター・ドラッカーです。ピーター・ドラッカーは著書である『明日を支配するもの』で「本業を持ちながら、第二のキャリアを築くこと」と定義しています。

パラレル (Parallel) は「並行」という意味の英語であり、パラリアキャリアは本業と並行して複数の経歴を身につけていくことを指しています。ひとつの仕事、企業に捉われない幅広いキャリアを目指していくことが目的です。

パラレルキャリアと副業の違い

本業と並行して別の活動を行う点で、パラレルキャリアは副業と混同されがちですが、本質は大きく異なります。副業はあくまでも収入を目的とした本業以外の仕事を行うのに対し、パラレルキャリアは収入のみを目的としていません。

パラリアキャリアは新しいキャリアやスキル、経験を得ること、人生を豊かにすることが主たる目的です。そのためボランティア活動を行う、サッカーのスクールコーチを行う、趣味で動画投稿を行うなど、心身を豊かにするための活動もパラレルキャリアの一環と言えます。収入の有無を問わない点が副業やパラレルワークと異なると言えます。

パラレルキャリアが注目されている理由

働き方の多様化

現代社会において仕事は必ず会社で行うものという考え方が薄れてきています。テレワークやワーケーション、フレックスタイムなどの多様な働き方が浸透してきているほか、仕事だけでなくプライベートの時間も大切にすべきだとするワークライフバランスなどの価値観も浸透してきました。

また正社員だけでなく、派遣社員やアルバイト、フリーランスなど雇用形態も多様化してきています。フリーランスに限れば、内閣官房日本経済再生総合事務局が発表した「フリーランス実態調査結果」によると、フリーランスとして働いている人は462万人、そのうち本業として働いている人は214万人であるとされています。

こうした働き方や雇用形態の多様化といった時代の変化に合わせるように、複数のキャリアを積むことができるパラレルキャリアに注目が集まっています。

終身雇用の崩壊

これまで一般的だった終身雇用や年功序列といった制度も、現代社会において限界を迎えつつあります。転職がごく一般的になり、人材の流動化が激しくなり、ジョブ型雇用などの新たな雇用形態も浸透しつつあります。

2019年5月には、トヨタ自動車の豊田章男社長が「雇用を続ける企業などへのインセンティブがもう少し出てこないと、なかなか終身雇用を守っていくのは難しい局面に入ってきた」と発言しています。豊田社長のこの発言は終身雇用について端的に状況を表しており、現代において、企業で働く従業員は終身雇用を前提とした人生設計が描きにくくなってきていることを示しています。

また、ひとつの企業にとどまらずに自身のスキルを活かすために転職することが当たり前になり、自身の経験やスキルアップのために活動の幅を広げることに価値がある世の中になってきました。

こうした雇用を取り巻く環境の変化は、そこで働くビジネスパーソンに自身のキャリアについて考えさせるきっかけとなり、未来に対する複数の備えを持つためにも、パラレルキャリアが注目され始めているのです。

女性の社会進出

昨今では女性の社会進出が叫ばれています。厚生労働省の「令和元年版働く女性の実情」によれば、女性の労働力人口は3,058万人となっており、7年連続増加傾向にあるとしています。共働き世帯も増えてきており、女性がさまざまなワークスタイルで輝ける場が必要であるとされてきました。

雇用に関する男女の平等は徐々に前進してきてはいるものの、出産や育児などでキャリアを中断せざるを得なくなるケースも事実として多く存在します。こうしたライフスタイルの大きな変化を伴いやすい女性のキャリアについて考えたとき、変化をポジティブに捉えられるようにワークライフバランスを整え、柔軟に活動ができるパラレルキャリアに注目が集まっています。

本業一本ではキャリアが途絶えてしまうリスクが高くとも、パラレルキャリアを通して社会と複数の接点を築いていくことで、多様な未来へとつなげることができる点で、女性の社会進出とパラレルキャリアは相性が良い概念だと言えるでしょう。

パラレルキャリアのメリット・デメリット

メリット

パラレルキャリアのメリットには下記のようなものが挙げられます。

  • 幅広い経験と人脈が得られる
  • 視野が広がり本業のモチベーションが上がる
  • マネジメント能力を養える
  • 社会貢献につながる活動ができる
  • 収入を得られることもある

パラレルキャリアは本業と並行して行う新しい活動であり、活動を通して幅広い経験と人脈が得られることが最大のメリットと言えます。人脈が広がることで新たな価値観に触れることができ、違う視点での情報が得られるなど自身に前向きな影響を与えてくれるでしょう。

また、パラレルキャリアの活動を行うことで、本業へのモチベーション向上も期待できます。本業とは全く異なる領域での活動は心身のリフレッシュにつながるほか、パラレルキャリアでの経験が本業に活かせるケースもあり得ます。

加えて、本業と並行してパラレルキャリアを充実させるためには、時間の活用やスケジューリングなどを工夫する必要があり、自身を管理・マネジメントしていく能力も磨かれることが期待できます。

さらに、NPOやボランティア団体の活動などに参加すれば、社会貢献も行えます。パラレルキャリアの目的は人生を豊かにすることであり、地域や社会のための無償の活動は、人生を豊かにしてくれることでしょう。

また、パラレルキャリアの活動で副業や起業の準備を行う人も多く、こうした活動が実れば副収入を得ることにもつながります。収入の有無を問わないパラレルキャリアではありますが、複数の収入経路を確保するために活動することもパラレルキャリアの一環と言えます。

デメリット・注意点

パラレルキャリアのデメリットには下記のようなものが挙げられます。

  • 行き過ぎると本業に支障をきたす恐れがある
  • 時間とお金がかかる
  • 周囲からの理解が得られにくい
  • 企業によっては就業規則に抵触する恐れがある

パラレルキャリアの活動に本腰を入れた結果、タイムマネジメントがうまくできず、本業に支障をきたしてしまっては本末転倒です。そのためはじめのうちはスモールスタートを心がけると良いでしょう。費用の面でもパラレルキャリアの活動は実費になります。加えて短期ではなく長期的な視点で見てすぐさま結果を求めないことが大事にもなります。無理して活動するのではなく、継続して活動できるものを選ぶといいでしょう。

また、パラレルキャリアの活動はまだまだ浸透しているとは言い難いため、周囲からの理解が得られにくく遊んでいると思われてしまう可能性もあります。その際はビジョンを伝える、実績を伝えるなどして説明する機会を設けても良いでしょう。

なお、企業によっては副業を禁止している場合もあるでしょう。パラレルキャリアの活動が収入を伴う場合は就業規則違反で本業を失ってしまうため、事前の確認が必要です。また、収入を伴わない場合であっても、活動によっては副業と勘違いされてしまい、就業規則違反を疑われてしまう恐れもあります。活動内容によっては、パラレルキャリアを始める前に問題ないかを確認しておくことも必要でしょう。

パラレルキャリアの活用事例 5選

事例① ボランティア活動をする

会社員として働きながら、自身のこれまでの経験などを活かしてボランティア活動を行うのはパラレルキャリアの代表的な例です。ボランティア活動を行っている組織や団体は数多くあり、やりがいや社会的な意義も十分にあるため、パラレルキャリアの入口としてお勧めの活動だと言えます。

ボランティアには、地域での活動からNPOへの参加までさまざまな形態があり、活動内容も福祉や教育、スポーツ活動への支援など多種多様です。自身の趣味や好みに合わせた活動をしてみたり、能力を社会に還元できる活動を選んでみたりと、選び方も人それぞれです。

事例② ネットで副業をする

近年ではインターネットを利用して自宅で副業を行う人も増えています。ネットでの副業は参入障壁が低く、ほとんどコストもかからないため、スモールスタートで始めやすい活動だと言えるでしょう。副収入というわかりやすい成果も出るため、パラレルキャリアを継続するモチベーションも得やすいかもしれません。ネットでの副業の一例としては以下のようなものが該当します。

  • ブロガー(アフィリエイター)
  • YouTuber
  • SNSインフルエンサー
  • ライター
  • デザイナー
  • 資料作成(Word / Excel / PowerPoint / Access等)
  • データ入力
  • ネットショップの運営
  • コンサルティング

ブログを書いてアフィリエイト収入を得る、というのは一昔前から流行ったネット副業の典型です。最近では若い世代を中心にYouTubeやInstagramなどのSNSで多くのファンを抱えて広告や企業コラボで収入を得る人も増えてきています。

ライターやデザイナーは、スキルが磨かれるネット副業です。クラウドソーシングのサービスを利用して執筆依頼を受けているライターやデザイナーは多くいます。これらを本業としてクラウドソーシングで依頼を受けて生活を成り立たせることは簡単ではありませんが、本業を持ちつつ長い目でスキルを磨いて少額の収入を得るところからスタートすることは難しくありません。

資料作成やデータ入力は、ビジネスパーソンならば大抵の方が持っているスキルを活かして成果物を作成する仕事です。ライターなどと同様にクラウドソーシングのサイトでも多くの案件が募集されています。

ネットショップの運営やコンサルティングは少しハードルが高いネット副業だと言えるでしょう。それぞれ高いノウハウが必要となるため参入は容易ではありませんが、ここで述べた他のネット副業よりも収入を上げやすいことが特徴と言えます。

こうしたネット副業は、本業を持ったビジネスパーソンから主婦まで、個人の都合に合わせてさまざまなサイドビジネスとして運用できるため、収入を目的とするならば悪くはありません。一方、パラレルキャリアとして長期的な目線から人脈やスキルを得ようと考えた場合、大勢の方と関わって多様な価値観に触れたり、全く新しい分野にチャレンジしたりといった機会が少ないため、お勧めはしにくいかもしれません。

こうした副業は、性質的にはどちらかと言えば「パラレルワーク」に近いと言えるかもしれません。

事例③ 週末だけ開店する飲食店・カフェ・バーなどを営業する

平日は会社員として働き、週末は空きスペースなどを借りてカフェや飲食店などを営業している人もいます。

カフェを経営することで、地域コミュニティの憩いの場になり、接客を行うコミュニケーションを通して人脈が広がることも期待できるでしょう。加えてカフェなどを経営することで、コストや売上などの数字管理から経営能力までもが磨かれることが期待されます。経営者の視点を得られれば、本業にもパラレルキャリアの経験が還元できるでしょう。

ただし、店舗を構えるということは相応の初期投資やランニングコストを伴うため、実行に際しては十分な検討が必要となることは忘れてはなりません。採算を合わせて利益を上げることは容易ではなく、赤字回避をするだけでも相当な努力が必要です。

事例④ 交流会や勉強会、朝活などに参加する

交流会や勉強会、朝活などに参加することもパラレルキャリアのひとつです。興味がある交流会や勉強会への参加は前向きに活動しやすく、継続もしやすいでしょう。

他の人とコミュニケーションが取りやすいため、人脈が広がる、経験が積めるなどのメリットがあるでしょう。また、勉強会で身に付けた知識や交流会で得た人脈が、本業で活かされることもあるでしょう。

パラレルキャリアの始め方

STEP1:やりたいことを探す

パラレルキャリアには「これをしなければならない」というような決まりはありません。自身の好きなもの、興味のあるもの、やってみたいもの、経験したいものなどがあれば積極的に行動するのみです。

始め方ややりたいことの探し方も人それぞれです。やりたいことリストを書き出してその中から選択する人もいれば、やりたくないことリストを書き出してリストアップされた項目に該当しない活動を探す人もいます。

パラレルキャリアは本業と違ってスモールスタートで気楽に始められることが強みです。始めてみて違うと感じたら止めて、別の活動を模索すれば良いのです。やりたいことを気楽に探すと良いでしょう。

STEP2:活動に参加する

やりたいことを定めたら、その活動を行っている団体に参加する、独自に活動を開始するなど自身の無理のない範囲で活動を開始します。パラレルキャリアの目的は人生を豊かにすることなので、スモールスタートで始めていく方法がお勧めです。中にはネットやSNSを利用して活動をする人もいます。

活動にも決まりはないので、どのような方法であっても活動をしていくことが大事です。パラレルキャリアに関する情報の中には「このような手順で始めましょう」などと書かれたものもありますが、自由であることもパラレルキャリアの価値のひとつです。本業ではできなかったやりたいことを、やりたいように進めましょう。

パラレルキャリアのおすすめの本 6選

明日を支配するもの――21世紀のマネジメント革命

ピーター・ドラッガーがパラレルキャリアという概念を提唱した本書には「中年の危機」として、組織よりも人間の寿命が長くなった現在において、第二の人生をどのように作れば良いかを記しています。その中で紹介されているのがパラレルキャリアという考え方です。そこにはパラレルキャリアの考え方から、具体的な例までが記されています。

書籍名
明日を支配するもの―21世紀のマネジメント革命
筆者
ピーター・ドラッガー
出版社
ダイヤモンド社
発売日
1999/3/1
URL
https://amzn.to/2ZFFbCZ

【スタンフォード式】世界一やさしい パラレルキャリアの育て方

パラレルキャリアの導入として全5章に渡って紹介している本書。誰でも怖い一歩目の踏み出し方やタイムマネジメントの方法などを図やイラストを用いながら、わかりやすく紹介しています。

書籍名
【スタンフォード式】世界一やさしい パラレルキャリアの育て方
筆者
江端 浩人
出版社
かんき出版
発売日
2021/7/16
URL
https://amzn.to/3DaAdvx

自分らしく働くパラレルキャリア

筆者自身がパワラルキャリアを実践しており、自身の体験と22名の実践者へのインタビューを通してパラレルキャリアの築き方を伝えています。これからパラレルキャリアを築きたい人のイメージが描きやすい一冊です。

書籍名
自分らしく働く パラレルキャリアのつくり方
筆者
三原 菜央
出版社
秀和システム
発売日
2018/9/7
URL
https://amzn.to/2ZDzTrs

人生が変わる2枚目の名刺

パラレルキャリアでの活動を「2枚目の名刺」と言い換え、今の自分の場所からどのように考え、実践していけば新しいライフスタイルを築いていくことができるのか。ケーススタディも収録し、これからのキャリアを考えていきたい人向けの一冊です。

書籍名
人生が変わる2枚目の名刺~パラレルキャリアという生き方
筆者
柳内 啓司
出版社
クロスメディア・パブリッシング(インプレス)
発売日
2013/1/17
URL
https://amzn.to/3d82VTb

時間と場所を選ばない パラレルキャリアを始めよう!

パラレルキャリアを行うことで課題解決力、発想力、リーダーシップが身につくとことができるとしており、実際のパラレルキャリアを行っている団体や個人の実例などを通じて、具体的な始め方を解説している一冊です。

書籍名
時間と場所を選ばない パラレルキャリアを始めよう!
筆者
石山 恒貴
出版社
ダイヤモンド社
発売日
2015/7/3
URL
https://amzn.to/2ZIWpiS

パラレルキャリア──新しい働き方を考えるヒント100

著者は荻窪にあるブックカフェ「6次元」の店主ナカムラクニオ氏。「年中無休」より「年中夢中」な生き方をコンセプトにしている本書では、これからの時代の働き方を見いだすヒントがたくさん書かれています。パラレルキャリア──新しい働き方を考えるヒント100

書籍名
パラレルキャリア──新しい働き方を考えるヒント100
筆者
ナカムラクニオ
出版社
晶文社
発売日
2016/6/4
URL
https://amzn.to/3EaLT2R

まとめ

転職が当たり前の時代になったように、本業のみならず他の活動にも力を入れている人が増えています。パラレルキャリアはその最前線に立つ活動と言えるかもしれません。
現在社会においては、本業一本で突き進むことは、ときにキャリアの柔軟性を損なうことにもつながりかねません。

パラレルキャリアを通じた活動は、自身の人生のポジティブな影響を与えてくれるとともに、ときとして自身を助けることにつながるかもしれません。ぜひパラレルキャリアの第一歩を踏み出してみてください。

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