T型人材とは?H型人材等との違いと必要なスキル・育成方法

T型人材とは

T型人材とは人材タイプの一種を示す言葉で、一つの特定分野において専門的な知識やスキルを持ち、かつ様々な領域とのコラボレーションや応用を実現できる能力を持った人材のことを指します。英語ではT-shaped skillsもしくはT-shaped personといいます。

T型のTとはその形が示す通り、各分野の知見を持ち柔軟に移り渡ってヒトや仕事をつなげていくゼネラリスト(自らの知見を水平方向に広げた-型人材)の資質と、ある分野に秀でて深い知識・経験を持ったスペシャリスト(垂直方向に専門性を掘り下げたI型人材)の資質、両方を併せ持っていることを意味しています。

人々の知識や経験、考え方、働き方が多様になった現代、自らの専門性をもって業務を推し進めながらも、他部署や他業種といった別の分野の知識を積極的に取り入れ、人をつなげて協同することができるT型人材はますます注目を浴びており、企業が求める理想の人材像としても掲げられることが増えてきました。

T型人材とは

T型人材の起源と歴史

T型人材という概念は、トップコンサルティング企業であるマッキンゼーにて1980年代に使われ始めたものだとされています。元々は一分野に秀でた科学者などがどのようにマネジメントスキルを得てキャリアを積んでいくか、の指針として示されており、マッキンゼー社内におけるコンサルタントの採用・育成モデルとして活用されていました。

その後、英国のヒューマンリソースマネジメントの教授であるDavid Guest氏が1991年自身の著作でこの概念について取り上げ、これを世界的なデザインファームIDEO CEOのTim Brown氏が「クリエイティブプロセスにおいて分野横断的に協同するチームの構築方法」として支持、広く世界に広まったと言われています。

T型人材とそれ以外のタイプとの違い

企業の求める人材タイプとして、T型人材以外にも多くの人材タイプが存在しています。ここではそれぞれのタイプ別にT型人材との違いを中心に説明していきます。

I型人材

いわゆるスペシャリスト人材のことをI型人材といいます。知識を深堀りした様子、または縦に積み上げた様子をIで表しています。現代でも特に技術分野において、特定のジャンルを極めたプロフェッショナルであることは企業への大きなアピールポイントとなりますが、万が一その技術が陳腐化してしまった際、それが大きなリスクとなる可能性も持ち合わせています。

H型人材

自らも深い専門知識を持ちつつ、I型人材(スペシャリスト)間の橋渡し役となり、異なる専門分野同士の連携をはかることができる人材をH型人材といいます。T型人材に対しさらに横につなぐ力が注目されており、異なる分野間の化学反応を起こして革新的なサービスやプロダクトを生み出す可能性も秘めていることから「イノベーション人材」と呼ばれることもあります。

Π型人材

横軸である幅広い知見に加え、異なる二種(以上)の専門分野(縦軸)を持つ人材をΠ型人材と呼びます。T型人材と比べさらに一つ以上の深い知識・経験を持っており、単独でクリエイティブな思考ができる貴重な存在といえるでしょう。

△型人材

△型(トライアングル型)人材とは三つの専門分野を持つ人材のことを指します。I型・Π型よりも希少性が高く、分野によっては企業に非常に重宝される存在となり得るでしょう。

J型人材

株式会社トライバルメディアハウス代表取締役の池田紀行氏により提唱されているのがJ型人材です。T型人材の中でも一分野の縦を極めた人は各界のプロフェッショナルとつながる機会を得て横に広がり、情報交換やコラボレーションを行うことによって、ある時他の分野でも縦軸の知識を伸ばしていくことができる、という考えです。この縦・横・縦の形がJ型に見える事からJ型人材と呼んでいます。

T型人材が求められる背景

社会にどのような人材が求められるかは時代背景の移り変わりと共に刻々と変化してきました。古くは大正時代、現代日本の雇用制度の特徴の一つである正社員制が生まれ、企業はまだ数の少なかった大卒生を囲い込み社内の複数部署での経験を積ませて幹部候補生としてじっくり育成をし、企業を広く知り企業をけん引する人材へと成長させていきました。そういったいわゆる社内ゼネラリストたちはそれぞれの属する企業の既存サービスの規模拡大を進め、それがイコールその企業の競争力につながっていた時代でした。

しかし社会の多様化が進み既存サービスの継続だけでは通用しない時代がくると、今度は広く浅くの社内ゼネラリストだけではなく、自社のオリジナリティを深めてくれるスペシャリストの育成が進められるようになりました。

被雇用者にとっても一分野のスペシャリストになることは、社会のどの場所にいっても評価が得られやすく転職にも有利なことでもありました。

さらに現代。技術革新が進みITの急速な普及と共に日々新しいテクノロジーやサービスが生まれ続ける中、常にコラボレーションを実現し、イノベーションを起こせる人材が企業から求められるようになりました。それがT型人材です。T型人材は自らの深いスキルを軸にして、常に新しい分野の知識を柔軟に取り入れつなぎ合わせて、企業やチームにイノベーションをもたらすことを期待されています。

T型人材に求められるスキル

学ぶ姿勢

幅広い視野を持ちつつも深い知識を身に付けるためには、自ら積極的に学ぶ学習意欲や、知的好奇心が不可欠といえます。一点に留まらず、縦にも横にも動き学んで自ら知見を広げ・経験を深められることがT型人材に求められる第一のスキルです。

自力で答えを導き出せる思考力

絶対的な答えや正解のない、あるいは最適な答えも日々変わっていく現代社会では、常に課題を把握し仮説を立て自力でその瞬間に適した答えを導き出せる能力が必須です。

今何が課題でどこを目指すべきなのかを判断する力、自らの知見から先行事例を見つけ出しこれまでに何が明らかになっているのか・ヒントとできるのかを把握する力、そしてどのような選択肢をとることが今最適なのかを自分なりに仮説に基づき結論を導く力。移り変わりの激しい時代、これらの思考力がT型人材に求められます。

アナロジー思考

アナロジー思考とは「接点のなさそうなジャンルの類似点や共通点を見つけだし、組み合わせることで新たな価値を創造する考え方」のことです。多くの発明は完全なゼロベースからではなく、その人の経験や知識の組み合わせによって生まれています。

このように異なる事項の何らかの類似を見つけ出し掛け合わせる力はイノベーションを起こすために必要で、専門性を持ちながらも広くジャンルを行き来できるT型人材の得意とするところです。

T型人材の育成方法

T型人材を育成するのに、縦の知識(│)を先に深めるべきか、横の知見(─)を先に広げるべきかには様々な考え方がありますが、ここではまず「縦の専門知識」を先にもたせることを強くお勧めします。

広く浅くから徐々に水平に積み上げるよりも、まずは縦に力をつけて自分の得意分野をもたせ、そこから徐々に他分野の知見を広げ裾野を広げて、山を築いていくというイメージです。順を追ってみていきましょう。

STEP1 専門領域を確立するための実務経験や研修

まずはどの分野でも構わないので、一度I型のスペシャリストとして一分野の深堀りを行うことから始めます。有効な実務経験を意図的に積ませ、さらに研修制度を有効に利用するなどして一分野の知識と経験を深めていきます。

この際肝心な点は、「本人の希望とのギャップが出ないよう十分に配慮すること」です。まずは一番始めに習得させる専門分野の選択を、本人の適性を元に慎重に見極めると共に、本人にT型人材に至るまでのフローと現在位置を適宜伝えてサポートをしてあげることが重要です。

育成初期で本人に十分な自信がない中で、本人の望まない分野の経験を延々と積ませることは本人のモチベーションを下げる大きな要因となってしまいます。

STEP2 ジョブローテーション

十分な専門性が身に付きI型人材となった後は、ジョブローテーションを行い知識の幅を広げましょう。一度I型となった自信から、次の専門分野への理解は格段に早まります。「外国語を習得する際、一度一つの言語をマスターしてしまえば、次の言語からは比較的早く習得できる」と言われますが、同じ原理です。

STEP3 部署の枠を超えたコラボレーション

他部署などともチームを組んで進めるプロジェクトに参加させ、柔軟な思考や多様な価値観を身に付けさせましょう。場合によっては経営者目線を身に付けさせるために、経営会議に参加させるなどの方法も良いかもしれません。部署の枠を超えたコラボレーションの経験を積むことで、T型の“─”の力を強化することができます。

STEP4 リカレント教育などの再教育

ここまでのステップでT型の基盤は完成しているため、後はこれを維持し強化し続けることが求められます。特に変化の激しい現代では常に学びを続けることが重要で、放置すると横の力も縦の力もすぐに陳腐化してしまいます。

実践を積ませ常に多様な価値観と触れさせることによってI型の深掘り、ジョブローテーションで横の拡幅を続けると共に「リカレント教育」や「リスキリング」といった教育の機会を定期的に活用することが効果的です。

まとめ

移り変わりのスピードがより加速するであろうこれからの世界で、イノベーションを生み出し企業の競争力を高めていくためにT型人材はますます必要とされる存在となっていきます。

被雇用者にとっては常に好奇心を持ち縦軸と横軸を伸ばしていくこと、雇用者にとっては社員を戦略的に育成しT型人材を育て上げていくことが、この先の生き残りに必要不可欠となっていくのです。

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