ポータブルスキルとは?5つの構成要素と身に付ける方法

ポータブルスキルとは

ポータブルスキルとは、業種や職種などが変わっても通用する「持ち運び可能な能力」です。どのような業界のどのような仕事に就いても活かせる汎用性の高い能力であり、社内で活躍するために役立つだけでなく、転職などの採用活動でも重要視されるようになってきた重要な能力です。キャリアアップを考える上で欠かせないのがこのポータブルスキルだと言えます。
ポータブルスキルは、大別すれば「仕事の仕方」と「人との関わり方」に関する能力で構成されます。この2種類の能力をもう少し掘り下げると「課題を把握する能力」「計画を立てる能力」「実行力」「コミュニケーション能力」「マネジメント能力」の5つに分解できます。

仕事の仕方
・課題を把握する能力
・計画を立てる能力
・実行力
人との関わり方
・コミュニケーション能力
・マネジメント能力

専門知識や専門技術を持った人材は企業の競争力の源泉となる重要な要素ですが、誰もが一人で仕事をしているわけではありません。ほとんどの職場では、上司や部下、取引先などと協力しながら仕事を進めるため、専門家であったとしてもポータブルスキルは無視できない能力です。そういう意味で、ポータブルスキルは専門性を十二分に発揮するための土台であり、専門技術や専門知識とポータブルスキルの両立を目指すことは全てのビジネスパーソンにとって重要な意味を持つと言えるでしょう。

テクニカルスキルとの違い

ポータブルスキルと似た言葉として「テクニカルスキル」があります。テクニカルスキルは業務遂行能力とも言い換えられる能力であり、ポータブルスキルと比べてより具体的な専門的なスキルを指します。特定の業界や職種でスムーズに業務を遂行するために求められる専門的技術や専門知識などはテクニカルスキルに属する能力だと言えます。

テクニカルスキルはポータブルスキルの土台の上に形成されるべき能力であり、テクニカルスキルとポータブルスキルのどちらが重要だと比較されるようなものではありません。テクニカルスキルは特定の仕事においてプロフェッショナルとなり、最前線で活躍するためには欠かせない能力ではありますが、ポータブルスキルなくして発揮されるものではありません。

テクニカルスキルとポータブルスキルを両輪と捉え、どちらも伸ばすことで初めて市場価値の高い人材となれることでしょう。

ポータブルスキルが注目されるようになった背景

ポータブルスキルが注目されるようになった背景には、キャリアを取り巻く環境の変化があります。「これからの時代に求められるキャリアマネジメント」の記事でも触れたように、キャリアマネジメント2.0で「転職含み雇用」が前提となりました。新卒で入社した会社で定年まで勤めあげる従業員は少数派となり、誰もが当たり前に転職を経験する時代です。

株式会社マイナビが発表した「転職動向調査2021年版」によれば、「転職は前向きな行動である」と回答した人の割合は69.7%。現代のビジネスパーソンにとってキャリアアップに転職は欠かせない行動になりました。

こうした環境下において、どこに行っても役立つ能力であるポータブルスキルが注目されることは想像に難くありません。異業種は言うに及ばず、同業界・同職種であっても仕事の仕方や人との関わり方は千差万別です。新たな環境でもスムーズに仕事を回せ、同僚や取引先と円滑なコミュニケーションが取れてこそ、今まで蓄積してきた専門知識などが光るというものです。

現職の機会が増えた現在、どのような現場であっても活躍できるポータブルスキルを持っている人材が評価されるのは当然の流れとも考えられます。今後人材の流動化はますます加速すると予測されているため、ポータブルスキルの重要性は増す一方でしょう。

ポータブルスキルを磨くメリット

ポータブルスキルを磨くメリットは、一言で言えば「自身の能力と市場価値が向上すること」です。あらゆる仕事で土台となるポータブルスキルが磨かれれば、どの現場でも実力を発揮することができるため、できることの幅が広がります。今の仕事をよりスムーズに進めることにも役立ちますし、ジョブローテーションによる配置転換や昇進で業務内容が変わっても、新たな仕事で成果を発揮しやすくなります。

できることが増えて能力が磨かれれば、副産物として転職市場での市場価値も高まります。転職を通したキャリアアップを考える際にも、やりたい仕事やより良い条件の会社に就きやすくなるでしょう。

ポータブルスキルを磨くことは、自身の能力や市場価値を磨くことにつながるため、転職をする・しないに関わらず、キャリアアップを考える上で重要な意味を持ちます。ビジネスパーソンとしてキャリアアップを目指すならば、ポータブルスキルを磨くメリットは大きいと言えます。

ポータブルスキルを構成する5つの要素

課題を把握する能力

ポータブルスキルの構成要素の最初の1つ目は「課題を把握する能力」です。課題を把握する能力は仕事を進めていくうえで非常に重要です。現状を分析して課題を正しく把握することは、全ての仕事の基本でありながら最も重要な能力です。客観的に課題を把握する能力を磨くことは必ず役立ちます。

課題を客観的に把握するためには、事実やデータに基づいた現状の分析を行う必要があります。課題には組織的なものから個人的なものまでさまざまな種類があります。企業全体の事業戦略、組織のあり方、商品やサービス、自身やチームの仕事の進め方など、あらゆる情報を集め分析します。どこで生産性や効率が落ちており、どこがボトルネックとなっているのかを考える癖を付けましょう。

計画を立てる能力

ポータブルスキルの構成要素の2つ目は、「計画を立てる能力」です。課題を把握したら、次は解決に向けて計画を立てなければなりません。課題を把握する目的はあくまでも課題改善を通して、より良い未来を築くことです。課題解決に向かうための具体的な計画を立てられてこそ、課題を把握する能力が活きるというものです。

課題解決に向けた計画を立てる際は、「いつまでに、誰が、何をするのか」を考えましょう。スケジュール、関係者、アクションの3点が明確になっていれば、計画は前に進むものです。なお、計画を立てる際には前例を探してみても良いでしょう。

実行力

ポータブルスキルの構成要素の3つ目は、「実行力」です。実行力とひとくちに言うとわかりにくいかもしれません。具体的には、いつまでに、誰が、何をするのかなどの進捗の管理や、障害やイレギュラーの想定と対応などを含みます。あらゆる状況に応じて、柔軟に計画を進められる能力として、実行力が求められます。

なお、ここまでの「課題を把握する能力」「計画を立てる能力」「実行力」の3つは、ポータブルスキルにおける「仕事の仕方」に属する能力です。

コミュニケーション能力

ポータブルスキルの構成要素の4つ目は、「コミュニケーション能力」です。この「コミュニケーション能力」と「マネジメント能力」はポータブルスキルにおける「人との関わり方」に属する能力です。

コミュニケーション能力も曖昧な言葉ですが、ここでは主に社内の上司への対応、社内の部下への対応、社外への対応の3種の切り口で説明します。

上司から任された業務で十分な成果を上げるためには、自身に課せられた役割や期待を正しく理解する必要があります。こうした要素を言語・非言語のコミュニケーションを問わず読み取り実行する能力はビジネスパーソンにとって重要な能力です。また、部下を上手にマネジメントして能力を発揮させたり、正しく評価したり、指導したりすることもキャリアアップすると避けて通れない道です。同様に社外の人間と適切なコミュニケーションを行い、円滑に仕事を進めることも重要なスキルです。

こうしたコミュニケーション能力はビジネスのどのシーンでも役立つため、ポータブルスキルとして十分に磨いておきたい要素です。

マネジメント能力

ポータブルスキルの構成要素の5つ目は、「マネジメント能力」です。自身の仕事の進捗を管理するマネジメントから、部下の能力を最大限に発揮させてチームとして目標を達成するマネジメントまで要素はさまざまです。

特に部下へのマネジメントは指導方法や育成のポイント、目標設定、適切な業務の割り振りなど、部下の特徴に合わせた対応が必要になります。また昨今のコロナ禍においては、オンラインで部下とのコミュニケーションを取る場合も多く、部下とのコミュニケーションはより高いスキルが求められるようになりました。ヒアリングや面談、1on1などを通して、マネジメント能力の向上に努めると良いでしょう。

ポータブルスキルを身に付ける方法

厚生労働省の研修を利用する

厚生労働省ではポータブルスキルを多くの人に身に付けてもらうことを目的として、ポータブルスキルの研修を行っています。厚生労働省のHPに「ミドル層のキャリアチェンジにおける支援技法」として、ポータブルスキルの研修テキストとロールプレイングの動画があり、場面に沿って学習することが可能です。

社内研修用のテキストもあり、配布するテキストや講師にはどのような人材が適しているかなどが紹介されています。自社の規模や活用場面に合わせて利用しましょう。

民間の研修やビジネススクールに参加する

ポータブルスキルを身につける研修は民間企業やビジネススクールなどでも行われています。民間企業が提供するこれらの研修は、多くの場合ポータブルスキルとしてまとめられていません。タイムマネジメントやリーダーシップ、ロジカルシンキングなど、ジャンルごとに独立した研修が用意されていますので、自身の現状に合わせながら参加する研修を選択する必要があります。

ポータブルスキルを磨くためには、「課題を把握する能力」「計画を立てる能力」「実行力」「コミュニケーション能力」「マネジメント能力」などを総合的に身に付ける必要があるため、バランスよく研修を受ける必要があると言えます。

計画・優先順位・課題などを意識して仕事に取り組む

ポータブルスキルを身につけるためには、必ずしも研修を受けなければならないわけではありません。むしろ、研修だけで身に付くものではないと考えた方が良いでしょう。テキストや研修でインプットした知識やノウハウを、日ごろの業務でアウトプットすることで初めて能力として見に付き、自身の血肉となるのです。

例えば、複数の業務のタスク管理を行う場合は、優先順位やスケジュールなどの計画を立てて、きちんと進捗管理を行う。その際、上司と十分なコミュニケーションを取る。部下に行き届いたマネジメントを行ってチームの生産性を高める、など日々の業務の中できることは多くあるでしょう。

また、計画が予定通りに進まなかった場合でも、見積もりと実際の進捗の乖離を観察して、自身の計画能力を磨いていくことも可能です。最初から完璧な計画を立てて実行できる人はほとんどいません。課題を意識しながらトライアンドエラーを繰り返すことで、自身の中にポータブルスキルが蓄積していくと考えましょう。

ポータブルスキルのチェック方法

ポータブルスキルを身につけようと考える際、現状どの程度のポータブルスキルを持っているのか自身で正しく把握することは困難です。ポータブルスキルをセルフチェックしたい場合は、一般財団法人 人材サービス産業協会が提供する「ポータブルスキル セルフチェックツール」を使うと良いでしょう。

人材サービス産業協会は、前述の厚生労働省のポータブルスキル研修にも関わった財団法人ですので、ポータブルスキルを評価する上で多少の参考にはなるはずです。

まとめ

ポータブルスキルは全てのビジネスパーソンが身に付けるべき必須スキルと言っても過言ではありません。専門知識や技術などのテクニカルスキルは、ポータブルスキルという土台の上でこそ輝きます。現職でのキャリアアップを目指すにせよ、転職を通してキャリアアップを目指すにせよ、自身の能力と市場価値を高めるためにポータブルスキルを磨くことは決して無駄ではありません。研修や日々の業務を通して意識的にポータブルスキルに磨きをかけることで、どの分野でも活躍できる人材に近づきましょう。本稿がきっかけとなり、読者の皆様の将来の可能性が広がれば幸いです。

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