大企業から転職は難しいのか

今回は、よく話を聞く大企業からの転職は難しいのか?という問いについて書いていきます。この話が出てくる背景として、ニュースでも取り上げられる大企業による早期・希望退職が関係していると思います。早期・希望退職のニュースが発表されると、その会社から退職する人が転職出来ない、もしくは転職しても給与が大幅に下がるという悲観的な話も付随して出てくることで、そこから大企業からの転職は難しいと考える人もいます。

以下は、東京商工リサーチが発表した、「上場企業」を対象にした過去10年間における早期・希望退職募集の社数と対象人数の推移です。

社数 人数
2011 58社 8,623
2012 63社 17,705
2013 54社 10,782
2014 32社 8,852
2015 32社 9,966
2016 18社 5,785
2017 25社 3,087
2018 12社 4,126
2019 35社 11,351
2020 93社 18,635

直近数年で上がっていることもそうですが、事実、10年間で見ても常に数千人~2万人弱の早期・希望退職が発生しています。そして、通例では対象年齢は50歳以上というのがメインだったのですが、最近は対象となる社員の年齢制限を設けていない、もしくは35歳以上という形で対象年齢も下がっていることも特徴的です。

話が脱線しましたが、本コラムのテーマに戻ると、結論から言えば「大企業からの転職」は当然多数あります。キャリアデータベースを見て頂くと、大企業からの転職事例は多数です。もしよければ、ご自身の所属している企業を検索して、転職有無や転職先を見ていただければと思います。

ただ、ある理由によって、「大企業からの転職が難しくなる」ケースもあります。

大企業ゆえのジョブローテーションによる専門性の希薄化

大企業では、新卒配属ガチャと呼ばれる想定外の配属や、2-3年ごとに起こるジョブローテーションにより、転職時に重要となる「専門性」の希薄化が起こりやすい環境であり、転職マーケットから見た際には不利に働くこともあります。

以下は、独立行政法人 労働政策研究・研修機構が発表した、企業規模別のジョブローテーションの有無です。

上記の数値を見ると、規模が大きくなればなるほど、ジョブローテーション実施率があがることが分かります。これは、大企業による機能の細分化や、半終身雇用制度に基づく複数職種の経験によるものです。

ジョブローテーションの目的とメリデメとは

ジョブローテーションとは、所属する社員の能力開発や適材適所を目的に、「定期的に職場の異動や職務変更を行うこと」です。

企業目線で捉えると、

  • 新入社員の適性判断や、会社全体の把握を目的に、複数部署を経験させる
  • 幹部候補社員を一定期間で会社内の全体像・業務把握や人材把握を目的に、配置転換し、将来会社を背負う人材として育てる

という観点があります。

一方で社員(個人)の目線で捉えると、

  • 複数業務を経験する事で、自身の適性が分かる
  • (長く勤める前提で)会社の全体像の把握や社内での人的ネットワーク拡大により、業務をスムーズに遂行できる
  • 一方で、一定期間で業務内容が変わってしまうため、スペシャリストとして能力形成が出来ずに、専門性のない人材となってしまう

転職マーケットからの見られ方

転職マーケットでは、新卒とは異なり、基本的には「職種採用」となり、募集ポジションにおける専門性を持っているかどうかが、第一の判断軸となります。
それは、年齢が上がることにより、更に求められる傾向です。

そのため、単純な例ですが、企業が「法人営業職」を求めている際、

  • 大企業出身者で、「法人営業」・「経理」・「人事」を3年ずつ経験している人材
  • 非大企業出身で、「法人営業」を9年間経験している人材

がいた場合、勿論、保有スキルや業務成果にもよりますが、一般的には3年よりも9年経験している人の方が採用されやすいという事になります。

大企業の幹部候補社員で、複数職種を経験し、社内の仕組みが分かっていると「社内価値」は高まりますが、「社外価値」は高まりにくく、転職難易度が高くなります。よくある、大企業で課長や部長で高収入を得ていても、社外に出ると価値が低く、年収が下がるというのは、この構造によるものです。

転職前提社会になってくる中で、大事な事は、常に社外価値を意識した仕事やキャリアを築くことです。ジョブローテーションがある場合、自身のキャリアの軸を持つこと、出来るだけ隣接職種を経験すること(例えば、法人営業と営業企画など、より上流や上位役者の視点が培われて、相互に補完関係のある仕事はプラスに働く等)が出来れば、キャリアアップに繋がる場合もあります。

キャリアデータベースでは、職種ごとの遷移も確認できますので、自身の職種を経験した人が次はどういう職種になっているのか等を見て、自身のキャリアの軸や選択に活かしていただけると嬉しく思います。

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