キャリアやスキルにおける希少性とは
あなたの市場価値=「再現性」×「希少性」×「市場性」の掛け合わせであることを、 市場価値とは何か? で説明をしてきました。
ここでは、「希少性」について絞って、書いていきたいと思います。
まずは、一般的に自身のキャリアやスキルについて、「希少性」があるかどうかは、以下5項目について〇がつくかを確認してみてください。
- 職種軸で判断した時、当該職種を3年以上経験している。
- 得意としている職種において、チームや組織内で一番を取得したり、表彰されたりしたことがある。
- 自分の代名詞と言えるような、プロジェクトや仕事の成果があると言える。
- 今まで経験した職種を掛け合わせると、より経営に近い業務に近づいていると判断出来る。そのように自立的に異動や転職で選択している。
- 逃げ出したくなるような、身の丈不相応の修羅場を経験しているか。
■単一分野での希少性
まず考えたい事として、現在までの職務を通じて培われたスキルは、他者やマーケット環境を踏まえた上で、どこまでの「希少性」があるのか?です。
最初に判断すべきは、当該分野での経験年数が一定「守・破・離」のサイクルが回る程度には経験できたかだと考えます。
転職マーケットにおける1つの基準は、計3年以上あるかと言われています。なお、誤解してほしくないのは、「新卒入社の会社には3年いる」や「石の上にも3年」という事では決してないです。新卒入社の会社が良くなければ、すぐにでも出る選択も良いと思っています。ここでの3年は、キャリアの中で当該分野を3年程度経験しているかということです。
なぜ、「3年」という時間軸を挙げたかというと、「守・破・離」のサイクルが回り切るのが、凡そ3年間であることが多いからです。1年目(守)は、上司や先輩からの教えを受け「型」を学び、2年目(破)は、他の上司や先輩や外からも学び、良いものを取り入れ、自分なりの工夫をするようになり、3年目(離)は得た経験から自ら独自の新しいものを創り、確立していくと言われています。希少性というからには、誰かが出来る事ではなく、自分だからこそ出来る領域である必要性があり、それが出来るのは3年目が基準と判断していいと思います。
ただ、3年経てば良い訳ではありません。職種で3年経験している人は、世の中に数えきれないほどいます。希少性というからには、上位5~10%くらいには入っておきたいと考えることが普通でしょう。その5~10%程度の基準を達しているかを見る際には、「会社や組織、チームでの表彰経験があるかどうか(MVP等)」や「自分の代名詞と言えるような象徴的な成果を出しているか」と考えれば分かりやすいかもしれません。
表彰基準などは各社によって異なるので、一概に測れるものではありませんが、もし自分が希少性ある人材かどうかを悩んだ際は、最低基準としての「3年」や「表彰」、「代名詞と言える仕事をしてきたか」を胸に手をあてて問うてみてください。
■複数分野での掛け算による希少性
続いては、複数分野での掛け算による希少性です。
上述したのは、あくまで上位5~10%であり、良く質問を受けますが、上位1%になりたいけど、さすがにそこまでは実現できません、どうしたらいいですか?というもっともな問いです。上位1%は極めて難しい。どうすればよいでしょうか?
その場合には複数分野での掛け算による希少化という考え方が有効です。
教育実践家の藤原和博氏が提唱する、100万分の1の人材になる方法は知っていますでしょうか。単一領域で100万分の1になるのは難しいが、3分野において、100分の1になり、それを掛け算することによって、100万分の1の人材になって、自分をレア人材化できるという理論です。
ただ、この考え方は、キャリアマネジメントに基づき、ちゃんと理解した上で適用する必要があります。あくまで、どういうスキルを掛け算するかという事が重要で、ジョブローテーションで経験し、身に付いたスキルを単純に3要素かけても、価値ある希少性にはならないことがあります。
例えば、営業出身の方で、「法人営業(有形商材)」×「個人営業(無形商材)」×「個人営業(有形商材)」を掛け合わせた場合、たしかに経験としての希少性はあるかもしれないが、市場から見た際は、価値のない希少性とないと判断される事も多いです。
もう少し深堀りして、見てみます。以下の3類型のうち、どれが最も「価値のある」希少性があると思うでしょうか。
スキル1 | スキル2 | スキル3 | |
---|---|---|---|
パターン1 | 法人営業 (有形商材) | 法人営業 (無形商材) | 個人営業 (有形商材) |
パターン2 | 法人営業 (中小向け有形商材) | 法人営業 (大企業向け有形商材) | 営業戦略策定・ 管理 |
パターン3 | 法人営業(中小向け有形商材) | 営業組織立ち上げ、 マネジメント | 営業戦略策定・ 管理 |
答えは、パターン3が最も高く、次にパターン2で、最も希少性が低いのはパターン1です。この掛け算によって見られているのは、その掛け算によって「経営に近くインパクトを生み出せる」スキルに近づいているかです。もちろん、他の要素も踏まえた上で希少性は判断されますが、分かりやすくスキルで見ています。
経営に近くインパクトが生み出せるというのはどういう事か、単純化した例ではありますが、他職種も含めた具体例を挙げてみます。
法人営業担当の例
法人営業なので成果が最も重要視されますが、希少性という観点で捉えると、法人営業×営業戦略×営業組織立ち上げのような、複数領域に跨ぐ経験をしている人は少なく、希少性が増します。多くの企業は分業化されており、複数部署や領域に跨ぐ経験をしている方は少ない。逆にいえば、分業化された領域においては、人材は自社内にいるため、求められにくい。
そんな中、営業戦略を立てて、周囲を巻き込みながら部門や部署として営業成果を最大化できる人材は求められており、希少性がおのずと高くなります。売るだけではなく、売る仕組みを創ることも出来る。決められた仕組みでワークする人材ではなく、仕組みを創り上げていく人材の方が、企業成長に資すると判断されます。
企業採用担当の例
企業が成長していくためには、有望人材を採用する必要があり、採用担当自体は非常に重要です。ただ、ここにおいても、採用だけ出来るという人に、そこまで希少性は高くないのも事実です(勿論、採用力という単一スキルで高い能力を有していれば別です)。
企業は採用後の活躍や配置、昇格、モチベーション管理といった側面まで目を向けて中長期的な成長をしていくべきであるため、たとえば、採用スキル×育成スキル×制度設計スキルを保有している方は希少性が高いと見られます。採用後から活躍までを解決できる人材がいれば、外部への依頼コストや社内の必要人員数が減り、企業としてのインパクトも大きい。
マーケティング担当の例
マーケティングも同様です。マーケティング職として、オンラインだけではなく、オンラインもオフラインも出来るような人材は希少性が増します。もっといえば、マーケティングは全体戦略の一部なので、事業戦略・事業管理×マーケティング(オンライン・オフライン)×財務といった経験を持っていれば、企業としての全体戦略や最適化、P/Lも意識した活動が出来るため、インパクトは大きいです。
経営にインパクトがあるというのは、言い換えれば経営層や部長層がその役割であるため、是非、上位役者がどういうスキルセットの掛け合わせをもっているかを見るのも1つの手段と考えます。ただし、大企業や社内政治によって昇格していく方もいるので、その場合は社内を見る必要はなく、社外に目を向けてください。いわゆる経営層や、CxOと呼ばれる方のインタビューは調べればいくらでもありますので、自分と同様の業界や職種にいる人を見るだけでもヒントがきっと見つかります。
上記は定性の例となりますが、キャリアデータベースでは、CxOになった方がどのような職種を掛け算してきたかもわかりますので、是非参考にしていただけると嬉しいです。
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